野木町の将来構想について(私案)

 平成27年度から、我が町においては「野木町総合戦略」及び「人口ビジョン」を策定し、本格的に取り組
んでいます。
策定時、私も策定委員会の委員として参画しましたが、残念ながら提起した意見はほとんど取り入れられると
ころとなりませんでした。
 *執行部としては最大限尊重したということでしょう。
時間がない中での作業であったということもありますが、資料を取りまとめることに意を用いた感があり、施
策内容等についてはもう少し時間をかけ広く町民等の意見を反映すべきではなかったかと、携わった委員の
一人として反省しています。
 * パブリックコメントとして意見を求めましたが、この度の「野木町総合戦略」は今後の町の命運に係わ
  る重要な内容であることを勘案するならば、説明会等の場で広く町民の意見を拝聴するべきであったと考
  えます。

 また今回の委員としての参画は、議会の議員ではありますが、議会を代表したものではなく、あくまでも有
識者という立場の一個人として選出されたものであると理解しており、議会、執行部双方ともその前提を認識
しているものです。
そのこともあって、「野木町総合戦略」について議会として意見を反映できる場を設けるよう再三提案しまし
たが、執行部は全員協議会で説明する場を設けたものの議会の意見を取り入れるという姿勢に立った意見交換
の場ではなく、あくまでも報告・説明という形式でありました。
執行部側からすればその形式を受け入れたのは議会側ではないかとの反論があろうかと思いますが、いずれに
しましても議会、執行部双方とも、二元代表制の下での責任を果たしている、と町民から理解を得られるよう
もう少し工夫、努力を行うべきであったと思います。

 この度、野木町総合戦略策定委員会で提起した意見等を踏まえ、今後の議員活動の指針とするため、自分の
考えているところを、「野木町の将来構想について(私案)」として取りまとめました。
手持ちにしておいてもよいと考えたのですが、町民の皆さまから選ばれた議員として活動していく指針とする
のであれば、皆様に提示したうえで忌憚のないご意見を頂戴し、活動に反映していくことがより生きた議員活
動になると考えました。
 是非忌憚のないご意見をお聞かせいただけますようよろしくお願いいたします。

 野木町の将来構想について(私案)
◇ 現状分析
1.町の現況
(1) 位置
    JR宇都宮線・湘南ライン線の野木駅を利用することにより、東京駅、品川駅、新宿駅、渋谷駅などの
   主要ターミナル駅へのアクセスが、乗り換えなしで約1時間30分以内で可能です。
    これにより、主要ターミナル駅を中心にしたビジネス圏域への通勤が、およそ2時間~2時間50分程
   度で可能です。
(2) 土地利用
    町の面積は30.25㎢(100%)であり、市街化区域4.5㎢(15%)、市街化調整区域25.
   7㎢(85%)となっています。
   また、農業振興地域18.0㎢(約60%)が指定されています。
    土地利用の状況は、農地利用が約5割であり、これに山林、原野、雑種地を加えた自然的土地利用が約
   7割を占めています。
(3) 教育
    小学校5校及び中学校2校が町内に設置されており、高校教育は他市の教育に依存しているが、その分
   小中学校の教育に重点を置いた教育施策が展開されています。
(4) 自然
    町域の85%にあたる25.7㎢が市街化調整区域に指定されているため、水田・畑・林などの緑地が
   多く豊かな自然環境が残っています。 
(5) 産業
   ① 農業
     農業就業者数は797人(H22.2.1時点)であり、その構成は、総農家数は646戸(100
    %)であって、内訳は、販売農家453戸(70%:耕地面積が30a以上又は年間の農産物販売額が
    50万円以上の農家)、自給的農家193戸(30%:30a未満かつ50万円未満の農家)となって
    いるが、H17年時点と比較して、総農家数で▼97戸、販売農家▼146戸、自給的農家+49戸と
    なっており、減少傾向を示しています。
   ② 商業
     商店数及び従業者数(H24.2.1時点)は170店舗、1,221人であり、内訳は卸売35店
    舗219人、小売135店舗1,002人でありますが、この値は、H21年時点と比較して、それぞ
    れ▼10店舗▼38人、▼5店舗▼16人、▼5店舗▼22人となっており、減少傾向を示していま
    す。
   ③ 建設、製造、医療・福祉、サービス業等
     総計の事業所数及び従業員数は、H21年554事業所6,959人に対し、H24年495事業所
    7,387人と、事業所数では減少しているものの、従業員数は増加傾向を示しています。
     ただし、この従業員数の増加傾向は、後述する医療・福祉分野における増要因が大きく働いていま
    す。
     因みに、医療・福祉分野以外の事業者数及び従業員数では、H21年498事業所6,512人に対
    し、H24年445事業所5,730人と、大きく減少傾向を示しています。
     主な産業別に見てみると、傾向は次のとおりです。
     建設業は、事業所数及び従業員数とも、H21年108事業所539人に対し、H24年95事業所
    479人と、減少傾向を示しています。
     製造業は、同様にH21年116事業所3,459人に対し、H24年106事業所3,275人
    と、減少傾向を示しています。
     サービス業は、同様にH21年162事業所1,255人に対し、H24年151事業所130人
    と、減少傾向を示しています。
     医療・福祉は、H21年56事業所807人に対し、H24年50事業所1,657人と、事業所数
    では減少しているものの、従業員数は増加傾向を示しています。
(6) 人口
   ① 町の人口数は、H22年25,720人(男12,700人、女13,020人)に対し、H26年
    25,399人(男12,593人、女12,806人)と、年々僅かではあるが、減少傾向を示して
    います。
     なお、参考までに地区別の動向は、以下のとおりです。
         H22年(男:女)          H26年(男:女)                     
 友沼地区   8,134(4,028:4,106)                      8,017(3,978:4,039)
 野木地区            1,717(870:847)                               1,631(822:809)
 野渡地区            1,236(608:628)                             1,233(605:628)
 南赤塚地区        1,929(966:963)                             1,890(935:955)
 中谷地区               381(193:188)                                 358(185:173)
 丸林地区             8,469(4,217:4,252)                  8,715(4,393:4,322)
 潤島地区             1,860(930:930)                           1,879(959:920)
 若林地区                654(320:334)                           654(319:335)
 佐川野地区         1,016(485:531)                               950(458:492)
 川田地区                632(316:316)                               595(301:294)

   ② 労働人口に当たる15歳以上~64歳未満の人口は、H17年18,228人(男9、265、女
    8,963)に対し、H22年17,227人(男8、636、女8,591)と、減少傾向を示して
    います。
      *野木町統計情報の「11 年齢5階級別人口」より算出
   ③ 町内在住者の通勤状況は、以下のとおりです。
                          H17年           H22年  
      常住地による就業者・通勤者      14,908人                                          14,020人
      町内への通勤・通学している人       5,093人                                  4,308人
      町外へ通勤・通学している人                        9,815人                                            9,312人
     
     町の総人口が減少していることもあり、町内在住者の対象者が減少し、それに伴い町内及び町外へ通
    勤・通学している人も総体として減少傾向を示しているものの、町外へ通勤・通学している人の常住地
    による就業者・通学者に占める比率は、H17年65,8%に対し、H22年66,4%と、微増して
    います。
     この傾向は現在、子どもの数が減少していることを加味したとしても、それほど大きな変化はない
    と想われます。
      * 野木町統計情報の「11 年齢5階級別人口」に基づき算出した、通学者数と想定される15
       歳~19歳の人口変化は、H17年3,421人に対し、H22年2,671人と、減少傾向(
       ▼21.9%)を示しています。
   ④ 65歳以上の高齢者人口は、H27年4月1日現在、住民基本台帳調べによれば町の人口25,85
    7人に占める人数と割合は、それぞれ6,651人、25.7%となっており、約4人に1人です。
     これが、10年後の2025年には、国立社会保障・人口問題研究所の予想によれば全町民23,7
    68人に占める同町民の数は8,332人、率にして35.1%となり、約3人に1人が65歳以上の
    高齢者になると予想されています。
   ⑤ 子どもの人口は、手元の統計値で分かる範囲であるが、0歳~4歳までの数でH17年970人、H
    22年969人、5歳~9歳でH17年1,045人、H22年1,041年、10歳~14歳でH1
    7年1,296年、H22年1,055人となっており、経年で減少傾向を示しています。
     また、小学生、中学生の数は、小学生ではH22年1,194人、H23年1,243人、H24年
    1,238人、H25年1,239人、H26年1,230人、又中学生では同様にH22年654
    人、H23年629人、H24年574年、H25年579人、H26人599人となっており、若干
    の変動はあるものの、増える傾向にはありません。
(7) 財政
   ① 歳入・歳入は、H23年度7,025.8百万円、H24年度7,030.0百万円、H25年度
    7,331.7百万円、H26年度7,790.1百万円となっており、年々像傾向を示しています。
     * 参考:H27年度当初予算額 8,530.0百万円
   ② 町税は、H23年度3,779.6百万円、H24年度3,742.6百万円、H25年度3,6
    24.1百万円、H26年度3,671.3百万円となっています。
     町税のうち町民税は、H23年度1,977.6百万円、H24年度2,016.6百万円、H25
    年度1,840.2百万円、H26年度1,794.3百万円となっており、年々逓減傾向を示してい
    ます。
   ③ 積立金は、H23年度2,523.3百万円、H24年度2,709.7百万円、H25年度2,5
    12.4百万円、H26年度2,359.1百万円となっており、年々逓減傾向を示しています。
     その内の財政調整基金は、H23年度1,393.9百万円、H24年度1,533.1百万円、
    H25年度1,397.6百万円、H26年度1,294.4百万円となっており、同様に逓減傾向を
    示しています。
     * 財政調整基金は、用途が自由に使える積立金であり、その他の積立金は使用用途が特定されてい
      るため、財政調整基金の額が多ければ財政運営上の安心感があると考えられます。
   ④ 地方債は、H23年度4,658.9百万円、H24年度4,857.9百万円、H25年度5,0
    88.0百万円、H26年度5,449.6百万円となっており、年々増加傾向を示しています。
     その内の臨時財政対策債は、H23年度3,107.5百万円、H24年度3,402.1百万円、
    H25年度3,666.7百万円、H26年度3,955.0百万円となっており、同様に増傾向を示
    しています。
     *臨時財政対策債は、国からの地方交付税の不足分を国の保障の下に町が借り入れるために起こす起
      債です。

2.町政運営上の課題
  現状分析において町の現況として取り上げた事項を踏まえ、町政運営上の課題を列挙するならば、次のよう
 に整理できます。

(1) 町の位置の有利性が生かされていない。
    栃木県で東京に最も近い位置にある町というキャッチフレーズが施策に使用され、又町長の挨拶言葉に
   よく表現されるが、言葉が独り歩きしているにすぎないような印象を感じます。
    町政運営においてその有利性を生かした実体的な施策展開が図られていないように想われます。
(2) 町の自然環境が生かされていない。
    土地利用の約7割を自然的土地利用が占めていることでもあり、町の活性化策を進めるにあたって、こ
   の自然環境を生かした施策を前面に出して展開することは、町にとって有効性かつ優位性があると想われ
   るが、行政運営において、検討した跡すら感じられません。
    併せて、この一環として、町の社会基盤である農地等の自然環境を保全・維持するためにも、農業政策
   については、国・県の施策に付加し町独自の施策を積極的に検討、推進することが、他市町の例からも求
   められます。
(3) 町の企業育成の基本構想がない。
    雇用創出という基本目標は設定されているが、その取り組み内容となると、新規工業団地の造成と優遇
   策の充実ということであり、これらの施策は、外部にある既存企業や企業の一部である工場の誘致策が主
   目的に策定された施策であって、町内に所在する地場産業である中小企業(商業を含む。)を育成すると
   いう視点に立った町固有の施策は無いに等しいと言えます。
    また、創業への支援という取組み内容は設定されているが、その内容はあくまでも創業費用などの一部
   補助であり、企業創業(インキュベーション)を志す者が企業立上げに際して真に必要と求めるものはな
   にかという視点に立って施策検討を行ったとは想えません。
    その視点に立つのであれば、あらかじめどのような業種を対象として企業創業者を誘致するのかを想定
   しておいて、その業種に応じた環境整備等を含めた支援を行うということでなければ、単に創業費用の一
   部補助を提示したとしても魅力ある企業開設場所とは映らないと想われます。
    同様に農業、商業の育成についても、個別の対処療法的な取り組みは計画されているものの、将来像を
   見定めた基本構想がないことから、それぞれの施策を積み上げることによる着地点が見えてこないため、
   実施する又実施した施策の有効性・妥当性が判然としません。
(4) 少子・高齢化への対応に体系性、特色性、優位性がない。
   ① 今般の国の創生戦略においても重点的な対処課題として位置付けられており、我が町においても「野
    木町人口ビジョン」及び「野木町総合戦略」を策定したところであるが、その真の実行性が問われると
    ころです。
     しかしながら、総合戦略に示されている施策は、これまでの延長施策を列挙したに止まったもの又単
    に言葉が躍っているにすぎないと解せざるをえず、他市町との差異化及び置かれている実態への対応を
    考慮すると、その有効性は疑問視されるところです。
     体系的、優先的、特色ある施策の展開が求められるところです。
   ② 少子化については、体系的、優先的な施策の策定と展開が必要と想われます。
     現在実施中である、小学校入学の一年生にお祝いの記念品として本1冊を贈呈する施策などは見直
    し、真に出産や子育てしやすい環境づくりとはなにかを精査し、施策を策定する必要があります。
     教育環境づくり等との一体的な関連付けた取り組みが求められます。
   ③ 高齢化については、体系的、特色的な施策の策定と展開が必要と想われます。
    単に高齢者に焦点を当てるだけでなく、高齢者に関連する周辺環境の整備等を含めて施策化を検討する
    ことが必要と想われます。
     町の現況の「(5)産業」において前述したように、医療・福祉の事業従事者は増加傾向にありま
    す。
    この傾向は特に福祉に係わる事業従事者の伸びによるものであることを考え合わせるならば、この福祉
    分野に着目した施策を町の特色として前面に出して展開することも、一つの方向性であるように想われ
    ます。
     このことは、町の根本的なあり方に関わる議論であるが、今後の我が町の高齢化の進展を考えると、
    避けて通れない課題と考えす。
(5) 財政運営と予算執行に戦略性がない。
    年々町民税が逓減傾向にあり、また積立金及び財政調整基金が減少傾向を示す財政状況下にあって、予
   算イコール政策の方向性・戦略性を示すものと理解するが、予算に計上されている事業には、その方向性
   や戦略性を読み取ることができない事案が多く見られます。
    それを質すのが議会の役割ではないかとのご指摘を受けることになるが、予算編成の権限と責任が基本
   的に執行部に在ることを勘案するならば、予算を執行することによって、将来の町をどのような姿に持っ
   ていくのかを、キャッチフレーズではなく執行予算を通じて読み取ることができるようにすることは、執
   行部の責務ではないかと考えす。
    また、財政運営にあたっては、財政計画を策定し、財政分析指数(財政力指数、経常収支比率、実質収
   支率、公債費負担比率)や健全化判断比率(実質赤字比率、実質公債費率、将来負担比率等)の健全性を
   維持するよう努めているところであり、その管理数値は健全な値を示しているものの、果たして町の将来
   につながる有効な予算執行と財政運営となっているのか、疑問を感じるところです。
(6) 政策課題の変化に適応した人材育成の戦略がない。
    今般、国が推し進める地方創生戦略の展開にあたっては、従来国が策定していた施策を各自治体が自主
   的に自力で策定するよう位置付けられることとなり、我が町では、コンサルタントとの協力を得て「野木
   町総合戦略(以下「総合戦略」と言う。)」を策定したところです。
    この総合戦略に網羅されている「取組内容」には、これまで町が取り扱ってきた行政施策と異なった民
   間事業分野に近い内容が多く計上されています。
   具体的には、農業における6次化対応や観光振興、ICT推進などであるが、これらの施策を的確・適切
   に推進するためには、その分野に関するある程度の専門性が求められることとなりますが、在職者の中に
   そのレベルに適合する職員が存在するのか、はなはだ疑問です。
    その理由は、職員の資質に問題があるということより、これまでの人材育成の考え方に起因していると
   想われます。
   それは、将来的に取り組むべき施策課題の変化に対応できる人材を育成・確保するという発想(=戦略)
   の欠如に帰結するものであり、人材育成計画に取組施策として盛り込まれているものの、単なるお題目と
   なっている観があります。
    企業における人材育成戦略の観点からすれば、人材育成計画は無いに等しいと言えます。
(7) 基盤である地域自治への認識と対応が弱い。
    町では現在、H29年3月を目途として2か年を掛けて「野木町自治基本条例」の策定作業を進めてい
   るところであるが、策定PJ(検討委員会)の作業の進め方から判断すると、町の考え方は、条例を成文
   化することに意をもちいているように想われます。
    条例として成文化することは、町民の認識と方向性を合わせるということでは無いより意味があると言
   えるかもしれませんが、その作成過程において、地域自治の基盤となる区、自治会、ボランティア団体が
   抱える問題解消に向けた取り組みが同時並行的に進められるのでなければ、制定した条例は実行性の面で
   意味合いと価値を疑問視されることとなり、条例としての真価が問われることになります。
   その辺りの認識と取り組みの姿勢が行政に見られません。
    町政懇談会における参加者の意見では、最近自治会への加入率が逓減傾向にあり、その改善活動に向け
   た行政としての積極的な関与を求める発言が出ているが、行政は、区、自治会が任意団体組織の活動であ
   ることを盾に各組織に転嫁し、積極的に取り組む姿勢を示さないのが現状です。
    現行の地域自治の体制においては、活動主体である区、自治会の健全な組織と活動があってこそ地域自
   治の実現と活性化が図られるものであり、その担保を保証する取り組みがない中で自治基本条例を制定し
   たとしても、なんら意味合いを持たないことになります。
    また、ボランティア団体の活動については、その活動が趣味的な活動範囲に留まることなく地域自治に
   とって有意な活動となるよう、その方向性を導く役割を行政として積極的に果たすことが求められます。

◇ 将来構想(私案)
  これまで述べてきた「1.町の現況」及び「2.町政運営の課題」を踏まえた上で、町の将来構想について
 自分の想念を整理すれば、次のとおりです。

 (基本的な考え方)
  最も重要な点であるが、町の将来構想を策定する上で、現状とこれから予想される財政状況を踏まえた構想
 づくりが求められることは避けられません。
 これまでのようなあれもこれもという総花的な施策展開でなく、より効率的・効果的な行政運営を行っていく
 視点が要求されるところであり、そのためには、町民の理解の下町の将来構想に基づく政策の大きな転換が
 必要になると考えます。
 それは、人に焦点を当てた生活環境の事業へ思い切って転換を図ることです。
 我が町において少子・高齢化時代が差し迫っていることでもあり、この喫緊な問題に対応するためには、人に
 係わるソフト面での施策(生活環境)の更なる充実が必要と考えます。
  ハード事業については、既存の施設の建て替えや改修を優先せざるを得ないものの、ソフト事業の実施に伴
 い必要となる新たな施設等は、積極的に建設していく必要があると考えます。
  また、町の将来の発展に繋がるインフラである道路については、将来を見通した計画に基づいて計画的かつ
 積極的に整備していく必要があると考えます。

  人に焦点を当てたソフト事業(生活環境)に大きく舵を切るかどうかは、将来の町のあり様に大きく係わって
くると考えます。
  私の考える町づくりの方向としては、
   「 人と自然と環境にやさしい町 」
 を目指すこととし、この基本的な方向に沿った施策展開とそれに対する優先的な予算配分を執行するという方
 針に則った行政運営を実施します。
  なお、具体的な政策を策定する上で配意すべき事項を次に記述します。
  「1.町の現況」で述べたように我が町は、東京という大都市に近い割には未だ、田畑や山林という土地が
 多く残されており緑豊かな自然に恵まれた町です。
 将来の町づくりにおいても、大都市にない自然を有効に生かしつつ、世界のビジネス街と位置づけられる東京
 都心や沿線途中のさいたま市、県庁所在地である宇都宮市、隣接する小山市、古河市などへの通勤が可能とい
 う交通アクセスの利便性を活かしていくことは重要であると考えます。
  また、今後対処していかざるをえない喫緊の課題としては、他市町村と同様に少子・高齢化という現実的な
 問題が控えていますが、これらの問題については、消極的に捉えればマイナス要因となるが、反面視点を変え
 て積極的な捉え方をすればプラス要因と理解することも可能です。
  少子化や高齢化に対処していくために策定する施策については、その内容と位置づけを工夫することによっ
 て、町にとってのセールスポイントとなりえる素地があると考えます。

(構想)
1. 人にやさしい町
   前述したように、我が町は、あと10年後に3人に1人が65歳以上(町民に占める割合35.1%)と
  いう超高齢化時代を迎えることになると予想されていることから、高齢者にとって住みやすい生活環境を具
  備した町とすることは、要件の一つであると考えます。
   また、日本創生会議の提言によれば、我が町は、今のまま推移するならば、2040年時点での総人口は
  19,770人、20歳~39歳の若年女性は1,654人、若年女性人口変化率―47.1%と試算され
  ており、又町の現在の合計特殊出生率は1.33となっており、人口置換水準2.07に比べ大幅に低い水
  準にあります。
  このまま推移すれば少子化はますます進行し、人口減少と労働人口の減につながり、町の存続を維持するこ
  とすら難しい状況となると想われることから、若年女性が安心して出産、子育て、働ける生活環境を具備し
  た町とすることは、より重要な要件の一つであると考えます。
   加えて、若年女性にとってやさしい生活環境を整えることとともに、子どもにとってやさしい生活環境を
  具備することは、併せて配慮すべき要件の一つであると考えます。
  と同時に、障がい者にとってやさしい生活環境を具備することも、要件の一つであると考えます。

(1) 高齢者にとって住みやすい生活環境
    高齢者に対する医療や福祉の制度については、基本的に国の政策により運営されているため、町独自に
   よる制度運営を行うことは制約があり難しいと想われるが、提供サービスについては各市町村の企画や工
   夫によって特徴あるものが実現可能です。
  ① 団塊の世代が一時期に集中して転入したローズタウンにおいては10年後、多くの住民が高齢者夫婦世
   帯や高齢者独居世帯となり、これに伴う大量の空家の発生が予想されます。
   この予想される問題に対する対応策として、サービス付き高齢者住宅の建設を計画します。
   現にお住いの住民の声として、所有する住宅を代替資産として活用することができるのであれば、今すぐ
   にでもサービス付き高齢者住宅へ入居したいという意向を耳にしています。
   行政が主導することにより、地元などの不動産事業者、建設業者、介護事業者、金融機関等との連携によ
   るビジネスモデルを構築し、地元経済の活性化と雇用確保につなげることも可能であると考えます。
  ② 高齢者の中には自宅での生活を希望される方も居られると想われるので、出来る限り自力で家庭生活を
   送れることができるようなサポート体制を構築することも重要であると考えます。
   高齢化によって自動車運転等が困難となり日用品等の買い物に不便をきたすことのないよう、宅配システ
   ムの導入を計画します。
   宅配システムの構築にあたっては地元商店の活性化につながるよう配意します。
    併せて、ごみ回収についても検討します。
  ③ 同様に自動車運転等が困難となり病院への通院に不便をきたすことのないよう、交通手段の確保を図
   ることとします。
    * 地元経済への貢献度を最大限に高めるという視点を加味し、現行のデマンドタクシー制度の検証・
     見直しを含め最適な交通システムの在り方を検討し、実施します。
  ④ 健康寿命の延伸は、医療費用や介護費用の抑制につながることにもなることから、高齢者の健康生活の
   促進に役立つ健康遊具の公園への設置やアスレチックジムの開設など健康維持サービスの拡充を図りま
   す。
  ⑤ 公的施設については、予算の許す範囲になるが、計画的にバリアフリー仕様への改修・改善を図ること
   とします。
    また、住宅をバリアフリー仕様へ改修・改善する希望者に対する支援制度を、更に充実するよう計画し
   ます。
    併せて、同様に障がい者の方々に対する支援制度の拡充を検討・実施します。
  ⑥ 遣り甲斐と生き甲斐の更なる向上につながるようシルバー人材の活躍の場を拡大します。
   これまでの活躍の場を精査・検証し、従来職員が担当している役場の行政事務等を担っていただけるよう
   広く途を開く方向で検討・実施します。

(2) 若年女性が安心して出産、子育て、働ける生活環境
    「出産」、「子育て」、「働く」は、女性のとって連続した一体的な生活様式であることから、生活環
   境を考えるにあたっては、これらの生活様式を個々別々に捉えるのでなく、一体的な流れとして捉えるこ
   とが必要であると考えます。
   すなわち、これらの3つの生活様式の内の1つを取り上げて強化策を手当てしたとしても若年女性から見
   て必ずしも有効な施策と映るのか、疑問と考えます。
  ① 「出産」の支援策としては、現状でも出産祝金や不妊治療費補助金などの施策が講じられているが、こ
   れらはすべて金銭補助に限られています。
    ところで、現状において出産する場合、掛かることになる医療機関は隣接する古河市乃至は小山市に開
   院する産婦人に依存せざるをえない状況です。
   「安心して出産」ということを政策として掲げるのであれば、野木町に所在する産科において出産を迎え
   られる体制を整備することは、必要な要件であると考えます。
   その要件を整えられるよう関係機関と調整・検討します。
  ② 「子育て」の支援策を検討する上では、親に焦点を当てた支援策と子どもに焦点を当てた支援策の両面
   から対処することが重要であると考えます。
    「親」に関連しては、経済的支援や子育てと仕事の両立支援の面で充実を図ることとします。
    経済的支援については、保育料の軽減や給食費の無料化など教育費の軽減に向けた施策を強化する。
    子育てと仕事の両立支援については、働き手が保育を必要とするときにいつでも利用できるよう、保育
   施設の整備と働き手に合った保育サービスの充実を図ります。
    また、「子ども」に関連しては、学童保育サービスの更なる充実を図ることとします。
  ③ 「働く」の支援策については、家庭や職場におけるワークライフ・バランスを推進する方策に取り組む
   とともに、安心して就業することが可能となるよう子育てや親の介護・看護などとの両立が図れる環境整
   備に取り組むこととします。
   保育所の整備・充実や介護・看護サービスの更なる充実を図ります。

(3) 子どもにとってやさしい生活環境
    親の経済的な条件によって子どもの学習環境に差が付くことや将来の進路が閉ざされることのないよ
   う、学習の場の提供や学費の補助などの拡充を図ることとします。    
    学童保育サービスの更なる充実を図るとともに、ボランティア等の協力を得るなどして学習塾に通えな
   い児童に対する代替サービスの提供や、より高度な教育を志望する学童に進学の道を開くための学費補助
   などの支援を計画します。
    また、ボランティア等のご協力により子ども食堂の開設に取り組みます。

(4) 障がい者にとってやさしい生活環境
    障がい者(身体、知的、精神)に対する取り組みについては、先に触れた設備等のユニバーサル化など
   の物理的な環境整備を整えることのほか、生活していく上での自立化に向けた支援が求められます。
   この自立化に向けた活動は、現状地元の社会福祉法人によって取り組まれているが、この活動に対する行
   政による支援は、実質的に行われていないのが実情です。
   国の政策に基づき年間一定額の優先購入額を定め障がい者施設から物品を購入しているが、社会福祉法人
   が行政に求めていることは、単なる金銭補助ではなく自立化に向けた経済基盤となる仕事の創出に対する
   支援です。
   たとえば、町が積極的に推進している「花いっぱい運動」では、この活動においてボランティアが花壇等
   に植える花を町として購入しているが、購入する花の栽培から植栽までを社会福祉法人に委託し、障がい
   者の収入の道につなげることは可能です。
   この場合において栽培する知識やノウハウを施設側が保有していないとすれば、ボランティアなどの有技
   者を斡旋するなどを行政が主導して取り組むことにより、より実現性が高まります。
   このような事業を数多く発掘・創造できるよう、社会福祉法人と行政が一体となって取り組む仕組みを
   構築します。
    * 農業分野における実績も見られます。

2. 自然にやさしい町 
   
前述したように、町域の85%に当たる25,7㎢が市街化調整区域に指定されているため、水田・畑・
  林などの緑地が多く豊かな自然が残っています。
  世界的なビジネス圏と言われる東京に通勤可能な位置において豊かな自然が残されている環境は、野木町に
  住む我われにとっては当たり前になっているが、都会人からすれば極めて魅力あるもに感じられると推測さ
  れます。
  この貴重な財産である自然環境をできる限り保全・維持して子供たちに引き継いでいくことは、我われ現在
  に生きる町民の責務であり、その価値を町の発展に活かしていくことが重要であると考えます。
  この豊かな自然を保全・維持していくためには、土地利用の約5割に当たる農地利用を図っている農業従事
  者の存続が前提となることから、存立できる基盤の確立を図れるよう農業従事者が抱えている問題の解消に
  向けて、行政として積極的に支援していくことが必要です。
   しかしながら、ややもすればこれまでの町の農業問題に対する取り組みは、国、県が策定した施策を実施
  する方向であって、町の状況に即した町独自の施策を策定して問題解消に積極的に取り組む姿勢にはない
  と、農業従事者から指摘されています。
   自然にやさしい町を実現するためには、町のこの姿勢を変革し、農業従事者が抱える個々の問題解消に向
  けて積極的に取り組んでいくことが重要と考えます。
   農業従事者からよく言われる問題は、後継者不足と高齢化に伴う耕作放棄地の増大です。

(1) 後継者不足の解消に向けた施策
    後継者不足の解消に向けた施策としては、後継者が農業収入で生活できるよう事業として成り立つ農業
   の確立と後継者に代わる人材の確保が考えられます。
  ① 事業として成り立つ農業の確立については、農業の6次化やオーナー制度の導入、農地の集約化などを
   図ることが考えられます。
    6次化については、補助金を出すだけではなく、行政が主体となってモデル事業の選定や仕組み作りを
   積極的に推進する体制を構築し、実行します。
    また、オーナー制度の導入については、すでに実施している事例は多くあるが、鉄道沿線の立地条件の
   有意性などを活かした仕掛けを、行政が積極的にリードして構築し、実行します。
    同様に、農地の集約化については、行政が積極的にリードして農業従事者に働きかける体制を構築する
   とともに、集約化を促進する補助金などの制度を整備します。
  ② 後継者に代わる人材の確保については、現行の新規就農者に補助金を出すだけではなく、農業従事者の
   協力を得て研修制度を導入するなど新規就農者の開拓と定着につながる施策を計画します。
    * 研修期間の研修生に対する生活費の一部補助を行います。
    * 新規就農者に対して経営が軌道に乗るまで、たとえば3年間補助を行います。

(2) 高齢化に伴う耕作放棄地の増大に向けた施策
    農地の集約化を加速するため国では耕作放棄地に課する税金を増やす制度を導入することにしている
   が、高齢化に伴って実行上耕作することが困難になる事例は増大することになると考えられるので、集約
   化を強力に推進する働きかけを行うとともに、発生した耕作放棄地の活用を図る独自策を検討します。
   東京に近い立地を生かし、耕作放棄地などを活用した都民向けの家庭菜園を開設することを計画します。

3. 環境にやさしい町
   昨年平成27年9月10日に大雨洪水によって我が町においても床上・床下浸水を被るという被害が発生
  しました。
  この時に降った降水量は50年に一度の大雨であり、今後も同程度の雨量が降る可能性があると予想されて
  います。
  原因の一つとして地球温暖化の影響があり、この地球温暖化は環境問題の課題となっています。
  この大雨被害を受けたことを教訓にして、渡良瀬遊水地がラムサール条約に登録されたことでもあり、又豊
  かな自然が残っている我が町として、環境にやさしい町づくりに取り組むこととします。
   町として太陽光発電設備の設置に対する補助金を制度化したり、役場庁舎や校舎への設備設置を図る計画
  を推し進めているとこでもあることから、これを積極的に町づくりに活かして、町全体での自然エネルギー
  の活用を図ることとし、併せて電力料金の低減化に努めます。
   また、その他の環境負荷を減じる取り組みを積極的に推進します。

4. やさしい町づくりに向けたその他の方策
(1)財源確保に向けた取り組み
   各種施策を実施するためには裏付けとなる財源の確保が必要です。
  そのためには、地方交付税や補助金が見込まれるとしても、基本的には町の税収を増加させていくことで
  す。
  ① 町では企業誘致を図るためこれまで、新たな工業団地を開発し、工業用地の確保に向けた取り組みを進
   めてきたが、県土地開発公社の協力によりその目途が着いたところです。
   工業団地の開発はこのまま事業を継続することとし、開発完了後可及的速やかに企業を誘致できるよう県
   土地開発公社と連携し、誘致活動に積極的に取り組むこととします。
  ② 地場の中小企業を育成するための町固有の支援策を検討・実施します。
   基本的には、事業主の要望や意見を聴きつつ施策に反映していくこととします。
   たとえば、中小企業に入社する新入社員の基本研修を町(又は商工会)で実施するなど、各企業の負担
   で行うことが難しいと想われる大企業で基本的に実施されている人材育成を補完する仕組みを構築しま
   す。
   又新たに設備を増設する場合などの事業拡張や設備更新を容易とする支援制度を拡充します。
  ③ 企業誘致とは別に、企業創業(インキュベーション)を志す若者等を誘致するための支援策を検討し、
   実施します。
   たとえば、ICT分野はこれからも成長が続くと予想される成長分野であることから、この分野での開業
   に志ある若者等に焦点を当てることとし、開業を容易とするために求められる条件を研究し、施策に反映
   します。
   ITビジネスであっても、すべてがITの世界の中で完結するものではなく人との対面的な折衝行為が伴
   うこととなるので、東京近い立地の優位性を活かせると考えます。
    また、IT分野はIT機器を利用する時間が多くなるため、そこで働く社員にとって気分転換を図る環
   境が求められす。
   緑地が多く自然が豊かな環境や家庭菜園などの趣味が簡単に楽しめる環境は大きな付加価値として活かせ
   るものと考えます。
  ④ 東京に近い立地と農地などの自然が豊かな土地利用の優位性を活かし、家庭菜園やガーデニングの趣味
   を持つ東京在住者等に向けた転入策を検討・実施します。
   家庭菜園用の用地やガーデニング用の庭スペース付宅地の提供等を行います。
    * 家庭菜園用の庭スペース付宅地や賃貸での家庭菜園用地をセットした提供等
  ⑤ 財政運営については、町の将来構想に基づく長期的な視点に立って取り組んでいくこととします。
    学校、役場庁舎などの公共施設については現状、耐震工事や改修工事を実施することにより使用期間の
   延伸を行っていますが、このことは単年度予算や中期予算の編成では効果的な面があると考えられるがゆ
   くゆくは、これらの施設は耐用年数の限界となるために建替え時期を迎えることになります。
   新規の箱もののハード事業は原則的に行わない方針ですが、既存施設については、必然的に対応せざるを
   えないものです。
   これら公共施設等の大型施設の更改については、更改計画と長期的な財政状況の見通しを立てた上で、
   手当てすべきものについては基金を計上し、計画的に対応します。
               * 更改時期に合わせて当該施設の必要性を厳しく判定し、存続・更改する際には複合施設化を図
      り、運営管理費の低減につなげます。
  ⑥ 予算執行については、常に投資対効果を意識し、真に町の将来につながる有効な予算執行に努めること
   とします。

(2) 基盤となる地域自治の確立に向けた取り組み
  ① 地域自治の活性化を図るためには、基盤となる区、自治会の発展が基本となると考えます。
   その区、自治会が直面している未加入者の増大という問題については、任意団体組織の問題という傍観者
   的な対応で臨むのではなく、一義的に行政の問題として積極的に取り組むこととします。
  ② 今後の財政状況を鑑みると、任意団体組織である区、自治会ではあるが、これまで以上に行政が行って
   いる業務を担っていく役割を果たしていくことが求められます。
   そのためには、行政運営において区、自治会の自治機能を活かす仕組みを検討する必要があります。
   すでに栃木市などにおいて採り入れられている地域協議会の方式も一つの方法であるが、既存の区、自治
   会組織を活かした仕組みを構築します。
    * 年度予算の計画策定段階において、一定の予算額を区単位に割り振りその予算額の範囲で区として
     の事業を参考として提案させ、年度予算に反映するなど。

(3) やさしい町にふさわしい町役場の実現に向けた取り組み
    野木町における役場は、町のあり方や方向性を決める政策を立案・実行する行政組織としての性格を有
   するだけではなく、町域内のお客様に相当する住民に対し各種の住民サービスを提供する企業体としての
   性格を有するものであり、町一番のサービス企業です。
    また、行政組織としてビッグデータと言われる各種の統計情報等を有することから、野木町におけるデ
   ータバンクとしての機能や、政策策定において培った企画力を生かしたコンサルタントとしての機能を、
   町内において発揮することが求められます。
    しかし、今の役場はこれらの役割を果たすことに応えられるのかと問われれば、残念ながら疑問です。
   「やさしい町」を実現するに向けては、施策策定やその実行を推進することになる役場の果たす役割は重
   大であることから、真にその役割を果たせる役場とすることは喫緊に対処すべき懸案であると考えます。
   政策課題の変化や住民の求めるサービスの変化に対応できる役場とするためには、業務運営の中に変革す
   るための仕掛けを具体的に組み込むことが重要であると考えます。
    また、民間企業であれば事業にとって必要となる人材は経営者の判断で容易に採用できますが、行政が
   置かれている状況を考慮するとそのようなことは容易ではないため、時間は掛かりますが、職員を育成す
   ることにより対応することとします*。
     * 後段で触れます。
    そのためには、これまでにも人材育成計画を策定し取り組んできているものの予算面での措置が伴わな
   い計画倒れとなっている状況を見直し、正に人材育成戦略と位置づけ要する予算を先行投資の必要経費と
   して計上することが必要であると考えます。
    具体的には、次の取り組みを強力に推進することとします。
  ① 今般策定した「野木町総合戦略」については今年度から、本格的に取り組むことになるが、設定されて
   いる基本方策は、従来のような行政分野に関係するものでなく、民間分野の事業に相当する取り組みが多
   くあります。
   農業の6次化や企業創造(インキュベーション)、観光振興、ICT推進などであるが、これらを強力か
   つ効果的に推進する上では、これまでに蓄積した行政に関する知識に加え、それぞれの事業に関するある
   程度の専門性が求められます。
   残念ながら、現在の町役場にそれに応えられる人材が配置されているか、疑問です。
   政策の方向性や時代の変化に対応できる人材を育成していくため、真の人材育成戦略を早期に策定すると
   ともに、先行投資として人材育成の予算を確保します。
   また、それぞれの事業に応えられる職員を育成するため、当該分野の民間企業への派遣研修を実施しま
   す。
    併行して、我が町の地方創生戦略においても農業問題の解消や商工業者の活性化への取り組みが盛り込
   まれているところですが、6次化施策の強化による農業所得の拡大や商工業者の継続と発展、起業家の育
   成に向けては推進する体制や組織、人材が必要になりますが、仕組みづくりの意識が感じられません。
   これらに対応できる人材を役場内に求めることが難しい現状を勘案するならば、静岡県富士市(F-bi
   z)や島根県邑南町で進められている「しごとづくりセンター構想」は、現状の町役場では持ち合わせな
   い事業知識、経営知識、起業ノウハウ等を補完するためになくてはならない機能と考えます。
   役場のコンサルティング機能を強化する施策は必要不可欠です。
   そのために必要な人材の確保については、思い切った人材スカウト策を実施します。
  ② 若手職員の感性と新鮮な発想を事業に活かすため若手によるWGを立ち上げるとともに、成果発表会を
   開催するなど、自主的な活動を奨励する仕組みを導入します。
  ③ 人事評価制度の見直しと実効ある評価制度の運用を図ります。
  ④ 組織の活性化とサービス業精神の徹底を加速するため、組織運営の中核となる管理者向けの管理者研修
   の強化を図ります。
    * 民間企業の管理者向け研修を受講させ、組織における管理者の役割と意識を習得させます。

◇ おわり
  昨年春、エニスホールにおいて開催された講演会の講話の中で、講演者である元衆議院議員、元三重県知事
 を歴任された北川 正恭(きたがわ まさやす)早大大学マニュフェスト研究所教授は、我が野木町を「茹で
 ガエル」に例えました。
  この「茹でガエル」という比喩は、カエルは熱湯の中に投げ入れると熱さに耐えきれずに直ぐに飛び出す
 が、水に入れたまま熱すると水が熱湯になってもそのまま茹でられ死んでしまうというものであり、我が町の
 状況をその茹でガエルに擬した話です。
  この話にあるように、我が町は現在、目に見える差し迫った危機感を感じることはありません。
 しかし、恵まれた環境にあるからこそ、将来的に内在している問題を敏感に感じ取ることができていないのか
 もしれません。
 正に北川先生は、この状況を示唆したものと想われます。
 確かに現在、私から見ても我が町は、災害は少なく自然環境に恵まれた土地柄であり、町民は安全安心な生活
 を享受しています。
  しかし、10年後には、ローズタウンに居住する団塊の世代が一挙に超高齢化を迎えることとなり、高齢者
 夫婦世帯や独居高齢者世帯の増加、これに伴う大量の空家の発生や医療費用・介護費用の増大、又少子・高齢
 化による労働人口の減少など、将来の町にはこれまでにない大きな問題が内在化し、一部はすでに顕在化して
 いるかもしれません。
  これらの内在化する諸問題を踏まえた上で、私なりの「野木町の将来構想について」を策定してみました。
  いずれにしましても、これらの諸問題に対峙していくためには、行政、議会、町民が一体となって取り組ん
 でいくことが重要であると考えます。
  折角議員という機会を与えていただきましたので今後とも、鋭意尽力することをお誓いし、おわりといたし
 ます。

(更新状況)
 平成27年2月 6日 作成(初版)
 平成29年8月30日 一部追加
 平成30年4月 2日 一部修正
 令和 元年5月 8日 一部修正