議長の常任委員会委員就任について

  「野木町議会では議長の常任委員会委員就任を認めているが、これを改めるべき」との申し入れが町民の
方からありました。
「議長の常任委員会委員就任」を認める議会運営については、制度設計をするにあたり先輩議員の方々が議
論を重ねた上で導入を決めた結果と推察しますが、正直言ってこれまで、この点について自分自身で論理的
に考えたことがなかったことでもあり、これを契機に論考してみましたので、以下に記述します。

 議長の常任委員会委員就任の妥当性については、次の点から考察する必要があると考えます。

  (1)地方自治法上の位置づけ

  (2)議会で規定する条例等上の位置づけ

  (3)議長の権限

  (4)常任委員会の決定と本会議の議決との関係

(1)地方自治法上の位置づけ   

 平成24年の地方自治法改正において、委員会に関する規定が簡素化され、委員の委員会への所属及び選任
方法、在任期間等につては地方自治法で定めていた事項を条例に委任することとされました。
それに伴い、地方自治法は次のように改正されています。
 常任委員会の設置については、地方自治法第109条第1項において「議会は、条例で、常任委員会、議会
運営委員会及び特別委員会を置くことができる。」と規定されています。
 同様に、常任委員会委員の選任については、地方自治法第109条第9項において「前各項に定めるものの
ほか、委員の選任その他委員会に関し必要な事項は、条例で定める。」と規定されています。

(2)議会で規定する条例等上の位置づけ

 地方自治法の規定により常任委員会は議会が条例により置くことができます。
又常任委員の選任についても同条例上で定めます。
具体的には「議会委員会条例」に定めることになります。
野木町では、「野木町議会委員会条例」を制定していますが、常任委員会の設置については、その条例中の第
1条において「議会に常任委員会を置く。」と、又同条例中の第2条において「常任委員会の名称、委員定数
及びその所管は、次のとおりとする。
(1)総務経済常任委員会 7人 総合政策部、産業建設部、会計課、農業委員会、選挙管理委員会及び監査
委員の所管に属する事項並びに他の常任委員会の所管事項に属さない事項 
(2)文教民生常任委員会 7人 町民生活部及び教育委員会の所管に属する事項」と規定しています。
 同様に常任委員の選任については、同条例中の第5条において「議員は、少なくとも一の常任委員となるも
のとする。
2 常任委員及び議会運営委員は、会期の初めに議会において選任する。
3 特別委員は、議会において選任し、委員会に付議された事件が議会において審議されている間在任する。
4 閉会中においては、常任委員、議会運営委員及び特別委員(以下「委員」という。)を議長が指名するこ
とができる。」
と規定しています。
 この「野木町議会委員会条例」において議長の委員選任について明記した条項は規定されていませんが、
5条並びに第2条で定める各常任委員会の委員定数(14名)から判断する限りでは、正副議長はどちら
かの委員会に所
属することになっています。
現状では、議長は総務経済常任委員会又副議長は文教民生常任委員会に所属しています。

(3)議長の権限

 議長は、地方自治法第105条において「普通地方公共団体の議会の議長は、委員会に出席し、発言するこ
とができる。」と規定されていることから、その職責上副議長と違って、どの委員会にも出席して発言するこ
とが認められています。
又、野木町議会委員会条例の第5条において議員は少なくとも一の常任委員になるものと定められていますが、
この地方自治法の条項は、議長はその職責上、どの委員会にも出席し発言することができることを明確に規定
しているものであり、これら地方自治法と条例の規定を踏まえるならば、議長は一の常任委員会に所属した
上で他の
委員会に出席し発言することが認められているものと解することができます。

(4)常任委員会の決定と本会議の議決との関連

 議長が常任委員となることについては、常任委員会の決定と本会議の議決との関連を勘案する必要があると
考えます。
議長が常任委員会の委員となった場合には、当該委員会の委員として付託された案件について表決権を行使す
ることになります。
この表決権の行使をもって審議した結果を本会議において委員長が報告することとなり、その後採決が行われ
ますが、その採決に当たって、議長は、表決権がありませんので、議決に参加することはできません。
特例として賛否が同数になった場合に限り可否を決定する権限である裁決権が議長に付与されていますが、
の裁決権と委員会での表決権は法的に認められた位置づけであり、なんら相矛盾するものではありません。
又、委員会審査独立の原則に基づくと、本会議の側から考えると、本会議は、委員会の審査結果によって拘束
は受けないということになっていますので、委員会の決定と本会議の議決が相反する結果となることもあり得
ることになります。
 以上の点を考慮すると、議長の委員会における議決権の行使は本会議の議決に影響を与えるものではなく、
会運営上、議長に与えられている表決権と裁決権の行使の間に問題となる点はないと考えます。

 ― 考察結果 ―

 これまでに考察してきました(1)~(4)の事項を踏まえるならば、議長の常任委員となることについて
は、
法的にはなんら問題となる点はないと思われます。
又議会運営面においても、野木町議会の議員定数14名の現状を考慮すると、現行の運用について不都合が
ある
とは思われません。

 したがいまして、現行の制度、条例等を敢えて変える必要はないのではないかという結論になりました。