平成29年8月21日(月)~23日(水)の3日間の日程で政務活動視察研修を実施しました。
今回は、今後の町政運営の参考とするため島根県邑南町役場様を訪問し、「A級グルメ構想」及び
「日本一の子育て村構想」、「邑南町しごとづくりセンター」について研修しました。
〇 邑南町はどんなまち?
□ 島根県中央部の山間にある自然豊かな町(スイスのような風景)
・盆地の多い地形
・標高:100~600m
・面積:419.22㎢
・人口:11,394人(H28.4.1現在)
・世帯数:5,007世帯(同上)
・高齢化率:42,3%
・主な産業:農林業
・石見地域、瑞穂地域、羽須美地域がH16年10月1日町村合併 今年で合併13周年
□ 財政状況 (H28年度)
・歳入総額 151億5,631万円 地方交付税 68億1,612万円
依存財源121億8,497万円(80.4%)
・歳出総額 141億9,252万円 民生費 25億9,991万円(18.3%)
教育費 10億6,769万円(7.5%)
〇 合併後のまちづくり~地域力の醸成
□ 基本理念
・住民が主役・・・・まちづくり基本条例の制定(協働のルールづくり)
・周辺を大切に・・・集落が基本単位(216集落) 自治会の結成(39自治会)
自治会担当職員の配置(情報の共有)
・学びながら地域づくり・・・公民館の配置・職員3名体制
夢づくりプラン(自ら課題抽出→解決)
・合併後の一体感をどう高めるか・・・ケーブルテレビの解説(加入率96%)
□ 町民の満足度 ~ビレッジプライド アンケート結果
・町民の生活満足度 84.1%(全国平均値64.1%)
・とても満足の回答(36.7%)のうち食べ物がおいしいと回答した町民85%
□ 邑南町は「持続可能なまち」を目指している!
・年少人口 0~18歳人口 1,660人(H22) 1,700人(H28)1,800人(H33)
・高齢化率と年少人口割合 H27年 高齢化率 42.2% 年少人口割合 10.43%
・20~30代女性のU・Iターン者数 26名 (H27年度のU・Iターン者総数100名)
・H27年 合計特殊出生率2.46 栃木県1.48 全国平均1,46 野木町1.34
*人口を維持するためには合計特殊出生率2.07以上になる必要があるといわれています。
政府の地域創生戦略での目標値は1.8です。
出生数70名(前年度68名)
□ 攻めと守りの定住プロジェクト(H23年度~)
研修内容:
1.A級グルメ構想について
① 攻めのA級グルメ構想 5年間
・邑南町の「A級=永久」のイメージを発信→100年先の子どもたちに伝えられる邑南町の食文化
・数値目標
食と農に関する5名の起業家輩出→27名
定住人口200名の確保→213名
観光入り込み客数100万人の実現→92万人
・A級グルメ構想
官民共同による食と農を中心とした産業振興ビジョン →地産地消
・外商レストランによる経済循環・・・町内レストラン、町内店舗アベル内レストラン、広島三越内レストラ
ン(広島)→地域おこし協力隊(総務省)による外部人材の活用
・・・ターゲットを絞った地域おこし協力隊 → 田舎だからこそできる食の
本物の人材育成
・素材香房
中四国地方唯一のイタリアン認証レストランで一流の技術が学べる。
・食の学校
食の6次産業の推移に向けた食の研究開発、テストマーケティング
・食のプロが指導
黒越 勇 氏(町立食の学校 校長)世界料理五輪金メダリスト→ 地産地・外商レストランによる経済循
環・・・山形県のアル・ケッチャーノ
と共同経営アンテナSHOP
◆ 町内レストラン「AJIKURA(あじくら)」でA級グルメを食してみました。
最高の食材×地元の誇り=食による地域活性化
“ ここでしか味わえない食や体験” = A級グルメ
2.日本一の子育て村構想について
② 守りの日本一の子育て村を目指して10年間
・身近な安心な医療体制(公立邑智病院)・・・産婦人科、小児科機能充実 24時間救急受付(365日)
ドクターヘリ緊急搬送
民間病院や町立診療所等との連携
・子ども医療費の無料化(中学卒業まで)
・各種費用助成・・・妊婦歯科検診費用助成
予防歯科(フッ素塗布・フッ素洗口)費用助成
一般不妊治療費、特定不妊治療費助成
妊婦一般健康診査受診票交付
・子育て支援対策関連・・・保育料第2子目以降完全無料化・第1子目も国基準の6割
保育所完全給食(無料)
放課後児童クラブ
病児保育・延長保育、一時預保育・障害児保育
*待機児童は一人もいません
9カ所の保育所は統廃合しません
・教育 ― 「学校の統廃合しない方針を打ち出す!」・・・奨学金制度(医療・福祉・農林業・一般)→
医療福祉従事者確保奨学金制度
農林業後継者育成基金(奨学金)
邑南町奨学金貸与事業
笑顔キラキラ事業(学習支援員等の配置)
ふるさとまるごと博物館
学校図書館司書の配置(全小中学校11校)
特別支援教育の推進(学習支援員等の配置)
矢上高校教育振興支援→講師は現役東大生
*ネット環境を活用したオンライン授業
・日本一の子育て村構想のための財源・・・過疎対策事業債(ソフト事業)を活用
*H22年に過疎地域自立促進特別措置法が改正され、6年間の期間延長(H22~H28年3月31日ま
で)となる。
この地方債を有効に使って、一般財源の支出を振替え、向こう5年間の財源確保の見通しをたてた。
H24年6月の過疎法改正により有効期限がさらに5年間延長(H32年度まで)
邑南町日本一の子育て村推進基金を造成
*H23年度に条例を制定し、2億5千万円を積立て、過疎法の終了後の財源を準備(H24年度末で約3
億130万円に積み増し)
③ 徹底した移住者ケア
・UIターン者ケア・・・定住支援コーディネーター(職員男女2名)
+ 定住促進支援員(人望が厚く地域の状況に精通している人)
*移住前・移住後のUIターン者が地域になじめるように相談窓口
・定住促進支援員との協働・・・町定住支援コーディネーターとの連絡調整
空き家の調査、開拓ならびにデーターベース作成支援
移住希望者と集落との話し合いの調整及び指導、助言
移住者が地域で円滑な生活が始められるよう調整ならびに支援
・子育て支援サービスにポイント・・・町内商工会内の商店などが運営している買い物ポイント制度との連携
*子育てサービスを利用するだけで、ポイントが貯まり、貯まったポイントは、1ポイント=1円として
町内のお店で買い物ができる。
〇4ケ月健診を受けると20ポイント(夫婦で行くと40ポイント)
1歳6ケ月健診、3歳児健診、4歳児健診でもポイント付与
〇有料保育サービス(病児保育2,000円、一時預かり1,500円~2,300円)
利用料金100円=1ポイント
〇無料サービス(両親学級、乳児検診、離乳食教室、保育所(歯科・食育)、子育て講座、子育てサロン)
来場ごとに10~20ポイント
④ 邑南町版総合戦略・・・全町の戦略の基に12地区別の戦略
・全12公民館エリアでの戦略・・・(提案事業)
ハード事業、ソフト事業ともに可
(条件)
・人口減少に歯止めをかけるための事業
・地域住民が主体となって実施する事業
(公共施設等の整備を伴う場合はその運営を地域住民組織等が主体となって行うものであること)
・地域の総意であること
(自治会及び自治会連合会で了承されていること)
3.邑南町しごとづくりセンターについて
⑤ 邑南町しごとづくりセンターとは
このプロジェクト構想は現在、進行形であります。
H29.7.15にセンター長が内定し、同年10.5からセンター長がF-biz*で研修を開始し、同年
12月にセンターオープンセレモニー開催を予定。
* F-bizとは
f は fuji の頭文字。Biz は Business の略称。富士市発のビジネス支援センターを意味しています。
新しい市場を開拓したい、今の事業をさらに大きく成長させたい。経営の課題を解決したい。富士市産
業支援センターf-Bizは、そんな企業の声に応える産業支援の拠点です。
小出 宗昭センター長 / 企業支援家
1959年生まれ。法政大学経営学部卒業後(株)静岡銀行に入行。M&A担当などを経て、01年 創業支
援施設SOHOしずおかへ出向、インキュベーションマネージャーに就任。起業家の創出と地域産業活性
化に向けた支援活動が高く評価され、Japan Venture Award 2005(主催:中小企業庁)経済産業大臣表
彰を受賞した。
08年 静岡銀行を退職し(株)イドムを創業。富士市産業支援センターf-Biz(エフビズ)の運営を受託、
センター長に就任し現在に至る。
静岡県内でも産業構造の違う3都市で計4か所の産業支援施設の開設と運営に携わり、これまでに1,300件
以上の新規ビジネス立ち上げを手掛けた。
そうした実績と支援ノウハウをベースに運営しているエフビズは、国の産業支援拠点「よろず支援拠点」
や愛知県岡崎市のOKa-Biz、広島県福山市のFuku-Biz、熊本県天草市のAma-biZなど各地の地方自治体が
展開する○○-Bizの原点となるモデルでもある。
〇 概要
・ 経緯
町内企業や事業所では、少子高齢化、人口減少、長引く景気低迷の影響を受け、企業や事業所数の減少
とともに商品・製造品販売額が減少している。
このままだと、廃業を要因として地域住民の暮らしを支える商業機能の維持が困難となり、暮らしにく
さから町外への人口流出が加速する恐れがある。
だから今、「邑南町しごとづくりセンター」を設置し起業・創業支援、既存事業所の経営安定化と事業継
承を推進していく必要がある。
・ 目的
しごとづくりセンターは、全職種の地元企業や事業者の安定と成長を助け、また、起業や創業を支援し
地元事業者を元気にすることで地域経済を発展させ、町活力化に繋げることを目的に設置する。
・ 設置場所
田所公民館
・ 職員体制
センター長 1名 事務職員 2名 計 3名
・ センター長報酬
月額 1,000,000円
・ センター長の必要な能力
ⅰ 経営者へお金をかけず売上を伸ばす的確な提案ができる者
ⅱ 圧倒的な情報量をもち必要なネットワークがつくれる者
ⅲ 情熱があり、コミュニケーション能力が高い者
・ 事業者メリット
ⅰ 相談無料
ⅱ 伴走型(何度でも相談)
ⅲ 近いので行きやすい
〈 研修結果 〉
1.邑南町と我が町を比較して捉えるには、次の点に配慮して考えることが必要だと思います。
先ずは、予算規模と人口、町域面積の面です。
(1)予算規模については邑南町150億円規模、当町80億円前後であり約2倍近くの相違があります
が、そこに占める地方交付税の額は約70億円と、圧倒的に邑南町の方が多くなっています。
予算面で言えば、我が町の方が健全な財政と言えるでしょう。
(2)人口については邑南町約11,400人、我が町約25,500人と、我が町の2分の1の住民数
です。
(3)町域面積については邑南町420㎢、我が町30㎢と約13倍の違いはありますが、邑南町は殆ど
が山地で占められているため、住民が生活している地域は極めて限定されています。
したがって、上述(1)~(3)を踏まえて考えると、
① 邑南町においては、住民一人当たりにより多くの予算(税金)を支出できるということとなります。
② また、住民の生活圏が集中しているため、我が町に比べて道路等のインフラ整備の予算は少なくて済
むのではないでしょうか。
それにより、福祉・教育分野へより多くの予算支出を振り向けることが可能であり、より手厚く広範に
亘る施策を展開することができると思います。
③ 取り組むべき重点施策が町の課題に対応し明確になっており、また計画的に実行されています。
④ 我が町の予算執行に当たっては、最小の予算で最大の効果を追求する視点に立ち、邑南町以上に施策
の選別と優先度を考慮した町政運営を遂行することが求められるでしょう。
2.我が町の地方創生総合戦略においても農業問題の解消や商工業者の活性化への取り組みが盛り込まれて
いるところですが、国の補助金に関連した施策が主であり町独自の施策は脆弱です。
六次化施策の強化による農業所得の拡大や商工業者の継続と発展、起業家の育成に向けては推進する体制
や組織、人材が必要になりますが、仕組みづくりの意識が感じられません。
地方創生総合戦略会議の席上で委員の立場で同様な意見を提起しましたが、残念ながら結果的に一考だに
されませんでした。
邑南町で進められている「しごとづくりセンター構想」は、現状の町役場では持ち合わせない事業知識、
経営知識、起業ノウハウ等を補完するためになくてはならない機能と考えます。
3.取り組まれている施策とは別に強く印象として残った事柄を紹介します。
「A級グルメ構想について」の説明を担当された、敢えて個人名を記述させていただきますが、食と農
産業戦略室 寺本係長のプレゼン対応には、同席した議員全員が感銘を受けていました。
町の職員として「A級グルメプロジェクト」の推進役として活躍するとともに、A級グルメの中核食材
となっている「石見牛」を自らブランド化するため飼育に取り組んでいます。
「石見牛飼育」を町の活性化事業の1つとして成功したいと積極的に取り組まれている姿勢です。
また、プレゼンターとして自信と気迫に溢れた嬉々とした対応は、行政マンの匂いを感じさせない姿勢で
す。
4.最後に、言い訳と受け取られかねませんが、一言。
上述の視点は、議員の施策提案として取り組むというものではなく、邑南町に置けるように首長のリーダ
ーシップにより推進されるべきものと考えます。
強力に推進すべき施策には集中した予算投下と人員投下を行うべきです。
それこそ、現行の二元代表制の下では、この権限は議会に与えられているものではなく、あくまでも執行
権として付与されているものと考えます。
参考写真: