マイナンバーカードの普及について

 テレビや新聞で少子高齢化に伴う人口減少による労働力不足の問題が取り上げられているのを、頻繁に目に
します。
その中で本日(2018年8日(月))、下野新聞「針路」において「人口減少社会の暮らし改革」という論題の記事が
掲載されていました。
主な論点を記述しますと、次のようなものです。
・人手不足の背景には、景気回復による企業の求人増があることは間違いないが、同時に生産年齢人口の減少
 が影響している。
・日本では15~64歳の生産年齢人口は、1995~97年にピークを迎え、それ以降、現在まで1千万人
 以上減少した。
 それにもかかわらず、実際に働いている就業者数は減らないで済んでいるが、これは、女性就業率はこの
 間、20代後半から30代前半にかけて17%ポイントも上昇し、30代後半から50代前半にかけても8
 %ポイントも上がっており、60代男性に加えて、女性の就業者数の増加で日本経済は労働力を確保するこ
 とができた。
・すでに4年前に日本女性の就業率はアメリカを上回るようになっているが、今のところパート労働者が多い
 が、未婚が増え、結婚しても共稼ぎ世帯が6割を占めるようになることで、これを実現してきた。
・今後、日本の人口減少は加速し、労働人口の減少を女性就業の促進で緩和したいという社会のニーズは今後
 ますます強まると予想される。
・このような中で、日本の男性の家事時間はアメリカの平均家事時間より2時間程短くなっているが、女性の
 就業率のますますの上昇が期待される中、家庭においても性別役割分担の見直しが喫緊の課題になっている
 ことを考え合わせると、企業の働き方改革に加え、個々の世帯における「暮らし方改革」が求められる。

 この記事は、少子高齢化に伴う人口減少による労働力不足の問題について、「企業の働き方改革」との関連
で「家庭の暮らし方改革」の必要性と重要性を提起するものであると理解します。

 ところで、この記事を読後に、以前読んだ「国民ID制度が日本を救う」というマイナンバー制度を解説し
た本を想い出しました。
その本を読み終えた時に、マイナンバー制度を導入し活用することこそ、我が国における究極的な人口減少に
よる労働力不足の対処策ではないかとの感慨を抱いたことを覚えています。
この本において、国民番号制度(マイナンバー制度)を導入し活用している代表的な国の例として、バルト三
国の一つであるエストニアの事例が紹介されています。
エストニアでは、国民IDの活用とシステム間連携を図ることにより、ネット投票・開票、地方政府に共通す
る電子作業環境の整備、入学願書の一括登録、納税、交通機関の利用、運転免許、医療分野での病歴・診察連
携・調剤連携、介護分野、官公庁・自治体・銀行・企業の連携など全分野の業務がシステム的に連携処理を行
える仕組み(究極的な電子政府と言えるのではないかと思っています。)となっています。

 ところで、日本におけるIT技術の水準からすれば、エストニアに勝るとも劣らないマイナンバーを活用し
た全国版電子政府を構築することは、技術的に容易ではないかと考えるところです。
また、マイナンバー制度と電子政府の構築が人口減少による労働力不足の補足に繋がるものと考えます。
現状の官公庁・自治体・銀行・証券業界・保険業界などの業務に占める審査業務の割合は多いと推察されます
が、この審査業務はIT活用の最も適合した技術分野であり、そこに携わる稼動を大幅に削減することとな
り、結果として大幅な人的資源の削減につながるものです。
特に国内総生産を現状のまま維持していくためには、国の労働力構成として少ない労働力配分において優秀な
人材を、これまでの官庁・自治体等から民間分野へできるだけ配分することは避けて通れない方向だと考えま
す。
無論、民間分野においてもIT技術(ICT、IoT,AI等)を活用し業務の効率化に取り組むことは当然
ですが。

 さて、現状の国等の動向はどうでしょうか。
私から見て、いくつかの問題があるように思われます。
先ずは、政府の対応ですが、電子政府(マイナンバー制度の導入等)の推進体制と、何のために行政にITを
導入しなければならないのかの導入後の社会のイメージ(課題とIT活用の全貌)を国民に対し明確に示して
いるのかという問題です。
次に、マイナンバー制度に対する国政の問題です。
我が国は諸外国に比べて歴史的・文化的にプライバシーの問題に対してセンシティブな国民性であることは間
違いない事実だと思いますが、だからと言って国際的な潮流に後れを取ってよいということではないでしょう。
残念ながら、情報保護の問題を政党間の政争の具にしている観があるように思われてなりません。
個人情報保護の問題が社会の進歩を阻害するものであってはならないと考えます。
技術がどんなに進歩しても、そこに人間が介在する限り人為的な不祥事は生じるものです。
システム化に伴う情報漏洩の危惧を常に念頭に置いておくことは当然ですが、だからと言ってそのことを以っ
て、新たな社会制度の構築を容認しない姿勢は、我が国の将来的な発展の道を閉ざすものであり、国益に適っ
た政治判断とは言えないでしょう。
また、その他の問題としては、マイナンバー制度に限りませんが、サービス提供の現場である自治体においてI
T技術を活用する上で必要となるノウハウを有する人材が少ないという問題です。
そこで求められる人材は、IT技術のハード面に関する専門的な知識を有する人材というよりは、行政サービス
のソフト面においてIT技術の応用と活用を図れる人材です。

 最近、やっと中央官庁等ではそのレベルの人材(政・官とも)が育ってきたように想われますが、地方自治体
では市町村の規模等によって大きな差が生じているのが、実情ではないでしょうか。
このことは、行政(職員)と議会(議員)の双方に当てはまることではありますが。
国が推進している地方創生の取り組みにおいても、如何にIT技術を政策面で有効に活用できるかが、その自治
体の総合創生戦略の結果に関係してくると推察します。
首長や議会議員がIT技術関連の見識を深めていくことは、今後の地方自治体の運営を考え合わせると極めて重
要な事項ではないかと考えます。