副議長の議会運営委員就任の取り扱いについて

 本議題の投稿については昨年8月20日にホームページに掲載しましたが、最近になって一議員が発行
したレポートに再度取り上げられていましたので、改めて投稿します。
レポートでは間違った議会運営として記述されていますが、この事項についてはすでに、議会運営委員会
において議会としての統一見解が示されているところでありますので、レポートの記述は、そのレポート
を発行した議員の個人的な見解となっており、議会運営からすると町民の皆さまに対して誤解を与えかね
ない情報となっていることをご理解願います。
以下に記述しますが、何ら問題となる点はありません。
レポート発行者の意図が理解しかねます。
又、同じ議員としては、地方自治法や会議規則、議員必携等を踏まえもう少し論理的に理解するように努
めていただくことを期待します。

(見解)
 過日、3議員の連名により議長あてに「副議長の議会運営委員会委員就任は地方自治法において好ましくな
いとされているので、副議長の委員選任を見直すべき」との主旨の申し入れ書が提出されました。
また先日、その申し入れ書の写しを掲載したレポートが新聞折り込みとして配布されました。
 この申し入れ書において述べられている主張については、私からすれば、やや感覚的で論理性を欠いたもの
と感じられたこともあり、自分自身で論考してみましたので、以下に記載します。

 副議長の議会運営委員就任の妥当性については、次の点から考察する必要があると考えます。

  (1)議会運営委員会の地方自治法上の位置づけ

  (2)議会運営委員会の議会で規定する条例等上の位置づけ

  (3)副議長の権限

  (4)副議長と議長との権限の違い

  (5)議会運営委員会の権限と副議長の諮問行為との位置関係

  (6)他の地方自治体の例

 (1)議会運営委員会の地方自治法上の位置づけ

  議会運営委員会の設置については、地方自治法第109条第1項において「議会は、条例で、常任委員会、
 議会運営委員会及び特別委員会を置くことができる。」と規定されています。

(2)議会運営委員会の議会で規定する条例等上の位置づけ

  地方自治法の規定により議会運営委員会は議会が条例により置くことができます。
 また議会運営委員の選任についても同条例において定めます。
 具体的には「議会委員会条例」に定めることになります。
 野木町では、「野木町議会委員会条例」を制定していますが、議会運営委員会の設置については、その条例
 中の第3条の2において「議会に議会運営委員会を置く。2 議会運営委員会の委員の定数は6人とする。
 3 前項の委員の任期については、前条の規定を準用する。」と規定しています。
 また同様に委員の選任については、同条例の第5条において「議員は、少なくとも一の常任委員となるもの
 とする。2 常任委員及び議会運営委員は、会期の初めに議会において選任する。3 特別委員は、議会に
 おいて選任し、委員会に付議された事件が議会において審議されている間在任する。4 閉会中において
 は、常任委員、議会運営委員及び特別委員(以下「委員」という。)を議長が指名することができる。」と
 規定しています。
  しかしながら、「野木町議会委員会条例」においては特段副議長が議会運営委員に就任することについて
 規定していません。
 また、「野木町会議規則」及び法規の運用に一定の基準を与えることと、法規の足りない面を補足して会議
 運営をスムーズに行うことのために定めている「野木町議会先例集」においてもなんら規定していません。
  以上のように、副議長の議会運営委員就任について特段定める規程がないということを踏まえるならば、
 副議
長の議会運営委員就任については、法的に問題となる点はないと言えます。

(3)副議長の権限

  副議長の権限は、「議長に事故があるとき、又は議長が欠けたときは、副議長が議長の職を行う。」と規定
 されているように、あくまでも議長が事故によりその職務を執り得ない事由ある場合に限るものであり、通
 常
時から副議長に議長の権限が与えられているものではありません。
  もし仮に、副議長が議会運営委員会の委員となっていたとして、先に既述したように議長が欠けたときに副
 議長が議長の職を行うこととなった場合には、副議長としては議長と同じように議会運営委員会の委員として
 の役割を一時的に停止することにすれば、運用上なんら問題ないと考えます。
 このことはあくまでも運用上の話であって、法的な問題ではないと思います。

(4)副議長と議長との権限の違い

  議長には会議における表決権が付与されていませんが、副議長には付与されています(地方自治法第116
 条第2項)。
 また、議長は、常任委員会に出席し、発言することができますが、副議長は、認められていません(地方自治
 法第105条)。
 ただし、副議長が議長の代理にあるときはその限りではありません。
  以上のように副議長職を議長職と同等とみなすことはできません。

(5)議会運営委員会の権限と副議長の諮問行為との位置関係

  「副議長は議長と同じく議会運営委員会に諮問する立場であることから委員となることは不適切ではないか」
 との指摘がありますが、次の理由により不適切との指摘は当たらないと考えます。
  全国町村議会議長会編纂の「議員必携」においては「議長は議会運営委員会に諮問する立場にあるので、委
 員になることは適当ではない。」と解説されていますが、副議長は議長と同じ諮問する立場にあるとは、一概
 に言えません。
 この点については、議会運営委員会について規定する地方自治法第109条第3項に照らして考える必要があ
 ると考えます。
 同条第3項には、「議会運営委員会は、次に掲げる事項に関する調査を行い、議案、陳情等を審査する。一 
 議会の運営に関する事項 二 議会の会議規則、委員会に関する条例等に関する事項 三 議長の諮問に関す
 る事項」と規定されています。
 このように議会運営委員会が取り扱う事項には三つの事項がありますが、一と二の事項は議長の諮問の有無に
 かかわらずに委員会として取り扱うべき事項として規定されています。
 議会運営委員会は必ずしも議長の諮問機関としてのみ位置付けられているものではありません
  また、「副議長が議長の職務を執り行うことになったときに諮問事項を取り扱う場合が発生することになる
 ので、副議長も諮問する立場にあると解するべき」という考えもあるかと思いますが、「直接の議会運営以外
 のことで緊急を要さないものは、新たに選挙される議長に委ねるか、又は議長の事故の回復を待つのが適当な
 場合が多いと思われる。」との「議員必携」の解説もあることから、諮問事項については、副議長が議長と同
 じに執り行う事項と捉えるべきではないと思います。

(6)他の地方自治体の例
  常任委員会等の視察で訪れた町において、副議長が議会運営員会の委員になっている事例が散見されます。
  また、副議長が議会運営委員会の委員に就任することを、「議会委員会条例」等において明記している市
 町もあります。

  考察の結果としましては、これまでに論考してきたことを踏まえるならば、副議長が議会運営委員に就任
 したとし
ても、法的かつ議会運営上特段の問題はないという結論に至ります。

〈 参考 〉

1. 副議長の権限

  ① 地方自治法第106条第1項

    普通地方公共団体の議会の議長に事故があるとき、又は議長が欠けたときは、副議長が議長の職務を行
             う。

  ② 「議員必携」の解説

    「議長に事故があるとき」とは、法令上又は事実上議長の職務を執り得ない場合をいい、積極的に職務
            を執り得ない事由ある場合のみに限定されない。
   副議長が行うこととなる議長の職務は、原則として議長の職務のすべてに及ぶとされているが、直接の議
   会運営以外のことで緊急を要しないものは、新たに選挙される議長に委ねるか、又は議長の事故の回復を
   待つのが適当な場合が多いと思われる。

   (参考)議長の権限

    〇 地方自治法第104条

      普通地方公共団体の議会の議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会を統理し、議会を代
     表する。

      *「議員必携」の解説
        議長は、議会の代表者及び事務統理者としての立場と、会議の主宰者としての立場があり、権
       限もこの二つの立場に分けて考えることができる。
      (1)会議主宰者に属するもの
        ① 議場の秩序保持権
          議場を混乱させることなく、議事を円滑に運営するよう配慮することが議長の職責であ
         る。
         このため、秩序を保持する上に必要な措置をとる権限が与えられている。(以下は省略)
        ② 議事整理権
          議会の招集は町村長の権限であるが、招集後の議会の運営は、すべて議長が主宰する。
         このため、議事を進めるために必要な措置をとる権限を議長に与えている。(以下は省
         略)
        ③ 議会の事務の統理権
          議長は、事務局長及び事務局職員を指揮監督して議会事務を統轄処理する権限を持って
         いる。
         したがって、当然、事務局職員の任免権も議長が有する。
        ④ 裁決権
          過半数表決において、可否同数となった場合に、その可否を決定する権限である。
          *議長は表決権(議決に参加すること)を有しません。
           → 地方自治法第116条第1項
             。。。議会の議事は、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長
            の決するところによる。
           → 同条第2項
             前項の場合においては、議長は、議員として議決に加わる権利を有しない。

      (2)議会の代表(統理)権に属するもの
        ① 代表権
          対外的には、議長は代表権を有する。
        ② 臨時会招集請求権
          議長は、議会の意思として臨時議会の招集を求める必要がある場合は、議会運営委員会
         の議決を経て、議会の招集権をもつ町(村)長に対し、会議に付すべき事件を示して、臨
         時会の招集を請求することができる。
        ③ 委員会への出席発言権
          地方自治法第105条
          議員は少なくとも一の常任委員となるものと定められているが、議長は、その職責上、
         どの委員会にも出席して発言できる。
         この委員会での議長の発言については別段の制限は加えられていないので、。。。議案の
         内容についての質疑や意見を述べることも差し支えないとの見解(昭27.6.21行
         実)もあるが、あくまでも「議長」としては、ここ具体の政策判断までは論及すべきでは
         なく、委員会運営の基本的あり方に限定しての大所高所からの指導的立場の発言にとどめ
         ることが望ましい。

 2. 議会運営委委員会

 ① 地方自治法第109条

   第1項 普通地方公共団体の議会は、条例で常任委員会、議会運営委員会及び特別委員会を置くことが
      できる。
   第2項 常任委員会は、その部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関する調査を行い、議案、請
      願等を審査する。
   第3項 議会運営委員会は、次に掲げる事項に関する調査を行い、議案、陳情等を審査する。
      一 議会の運営に関する事項
      二 議会の会議規則、委員会に関する条例等に関する事項
      三 議長の諮問に関する事項
   第4項 特別委員会は、議会の議決により付議された事件を審査する。
   第5項 第115条の2の規定は、委員会について準用する。
      *第115条 → 議事の公開の原則及び秘密会
   第6項 委員会は、議会の議決すべき事件のうちその部門に属する当該普通地方公共団体の事務に関す
      るものにつき、議会に議案を提出することができる。
      ただし、予算については、この限りでない。
   第7項 前項の規定による議案の提出は、文書をもつてしなければならない。
   第8項 委員会は、議会の議決により付議された特定の事件については、閉会中も、なお、これを審査
      することができる。
   第9項 前各項に定めるもののほか、委員の選任その他委員会に関し必要な事項は、条例で定める。

 ② 「議員必携」の解説
   以下、議会運営委員会の権限を調査権と審査権の別に具体的に示すと、次のとおりである。
  (一)調査権
   〇 議会の運営に関する事項
     定例会や臨時会の運営のあり方(会期、会期日程、各議案、請願等の取扱い、一般質問の取扱い等
    )の(1)~(26)の事項の調査がある。
   〇 議長の諮問に関する事項
     議長が特に必要と認める場合には、議会運営委員会に諮問を行い、その調査、審査結果の答申を求
    めることがある。
     主なものとしては、
    (1) 議長の臨時会の招集請求
    (2) 議会の諸規程等の起草及び先例解釈運用等
    (3) 傍聴規則の制定、改正
    (4) 常任委員会間の所管の調整
    (5) 議員派遣に関する事項
    (6) 会議規則に基づき設置した全員協議会の運営規程について
    (7) 慶弔等に関する事項
    (8) その他議長が必要と認める事項
  (二)審査権
     議会運営に関する議案(議会自体に直接関係のある意見書・決議、専決処分事項指定議案等)、議
    会運営に関連する請願や陳情、又は会議規則、委員会条例改正の発議案が提出された場合の審査であ
    る。

                                              以 上