令和2年度政務活動視察研修を実施!

 令和2年11月4日(水)~5日(木)の日程で、議員有志8名と政務活動視察研修を実施しました。
今回は、岩手県盛岡市の農事組合法人「となん」と、青森県八戸市の八戸ブックセンター、八戸ポータル
ミュージアムおよび八戸中央青果株式会社を訪問しました。

研修―1

訪問先:  農事組合法人「となん」 
対応者:  平野 友則  組合長
      南野 正直  統括管理部長
      中塚 美智子 事務局長

(参考情報)
 盛岡市の概要:
所在地:  〒020-8530 岩手県盛岡市内丸12-2
面積 :  886.47㎢ (南北40.7㎞ 東西45.6㎞)
人口 :  平成30年10月1日 294,047人(135,425世帯)
予算 :  令和元年度一般会計予算
      歳入  114,890,000千円
       主な内訳: 町税      42、854百万円(37.30%)
                地方交付税   13,678百万円(11.91%)
                町債      11,739百万円(10.22%)

      歳出  114,890,000千円
       主な内訳:  議会費     658,521千円(0.57%)
                総務費   11,340,255千円(9.87%)
              民生費   47,330,450千円(41.20%)
                衛生費     8,637,554千円(7.52%)
              労働費       211,104千円(0.18)
              農林費    2,635,999千円(2.29%)
              商工費     1,113,032千円(0.97%)
              土木費     16,787、433千円(14.61%)
              消防費    4,618,656千円(4.02%)
              教育費    9,064、164千円(7.89%)
              公債費    12,442、831千円(10.83%)

議会:
      議員定数    条例定数 38人  平成24年4月1日施行
              性別内訳  男性 30人  女性 8人
          報酬    議長:711、000円  副議長:645,000円
                議員:617,000円
          (参考:三役報酬)
              市長:1、138,000円 副市長:882,000円
              教育長:721,000円
  
〈組織概要〉
1.農事組合法人「となん」とは
  岩手県都の盛岡市都南地域を対象とした加入組合員農家数953戸、経営面積974haと、農事組合法
 人としては日本一の広域集落営農組織です。
 2013年に法人化されましたが、この法人化については、農協職員、経済担当常務、代表理事専務を歴
 任され初代代表理事組合長に就任された熊谷 健一氏のご尽力によるものです。
  農家所得の向上、農地利用集積、担い手の育成を目的として以下の活動を行っています。
 〇 農産物の生産・販売
  ・品目ごと(水稲、小麦、大豆、園芸作物等)の生産
  ・品目ごとブランド化
  ・品目ごと所得向上につながる販売
  ・イベント開催による消費者との交流

 〇 農地の利用集積
  ・農地中間管理事業活用による農地の利用集積
  ・団地化、連坦化の推進
  ・基盤整備事業の推進
  ・遊休の内の活用
  ・体験農園

 〇 担い手育成
  ・受託者協議会設置による担い手育成
  ・農の雇用事業による担い手育成
  ・新規就農者による担い手育成

 〇 地域活動
  ・地域農業ビジョンによる担い手
  ・多面的機能直接支払い制度との連携
  ・地域イベントへの積極的参加

2.主な事業の取り組み

 ① 農家所得の向上の取組
   営業利益(販売金額)8億円、営業外利益(交付金、補助金、助成金、奨励金等)5億円
   1農家/500,000円、10a/50,000円
   法人経理外、多面的支払交付金1億円や環境保全型農業直接支払交付金(米、りんご)、農地中間管
   理事業(経営転換・農地集積・地域集積)協力金1億円以上都南地域に交付。

 ② 農地利用集積の取組
   農地中間管理事業650ha  農作業受託350ha
   農地基盤整備: 耕作条件改善事業80ha(草志田、湯沢、羽場)、県営(西見前)予定遊休農地改
   善・発生防止:多面的支払い交付金活用等で小麦、大豆播種

 ③ 担い手育成
   農業機械・労力銀行の事務委託、1戸法人の設立、新規就農者、実践班等実働グループ

 ④ 農産物の生産と有利販売の取組
   米粉用米(兼平製麺所・日の本穀粉提携)、酒造好適米(吟ぎんが赤武酒造提携)、加工用米(多収
   性品種つぶゆたか)、
   主食用(特栽ひとめぼれ、銀河のしずく):友愛病院、食堂等業務用精米販売:純情
   米いわてとの契約販売(運賃のコスト削減のため)

3.地域課題
 ① 新たな農政対策「生産調整の見直し」への対応
   「個別所得補償」の廃止に伴う、農家所得の向上めざした販売対策
 ② 農地集積
   「農地中間管理事業」「農地合理化事業」「農作業受託契約」の推進
   圃場整備(県営・耕作条件改善等)の推進
   多面的支払い交付金の活用による施設(田んぼ、畑、水路)保全管理
 ③ 明確化された担い手への農地利用集積
   「人・能吏マスタープラン」等で合意形成に基づき明確化された担い手(認定農家、地域担い手、法
   人、グループ等)への集積

4.課題解決
 ① 都南地域型営農システムの構築
   基本的には従来の家族型営農から地域型営農へ、但し従来からの家族営農を排除するものではなく、
   地域型+家族型をあわせた新たな営農システムを構築するとともに、多面的機能支払制度や基盤整備
   事業、施設補助事業など国の補助事業の活用など、一体となった営農活動の構築
 ② 生産
  ア 米
   清算については「ひとめぼれ」を中心に県オリジナル品種「銀河のしずく」を基幹品種とし、JAと
   の協議の上販売先を確保して1,000haまで作付拡大を目指す。
  イ 小麦
   日本製粉と取り組んできた小麦が、この度オリジナル品種「やわら姫」と登録された。今後作付けに
   ついては「やわら姫」に切り替え、将来的には都南だけでなく盛岡地域全域(100ha)での取り組
   みとする。
  ウ 大豆
   圃場条件、労力分散等からも今までとおりの取組みとするが、作付面積も増えていることから、今後
   乾燥施設、汎用コンバイン等の整備も必要となる。
 ③ 販売
  米
   「ひとめぼれ」は従来とおり特別栽培基本とし日生協へ、新たな取組として「純米いわて」への1,
   300t契約販売(ひろめぼれ600t、銀河のしずく700t)。
   加工用としては酒米用の「あさ開き」さんへ、米粉用としては日の本穀粉、兼平製麺所さんへは従来
   とおり。また、農政局から打診された備蓄用米にも取り組む。
   「銀河のしずく」については「純情米いわて」を中心とした業務用が期待される、県内消費が確立す
   れば流通コスト(運賃)が削減され、農家所得の向上につながる。平成30年度「銀河のしずく」頂
   上コンテストにおいて、筆頭理事兼平定さんが見事「最優秀賞」に輝いた。この機に作付を定着させ
   「となん」のブランド力が高まることに期待。
   「吟ぎんが」について残念ではあるが「あさ開き」さんとは契約切れとなったが、新たに「赤武酒造」
   さんとの取り組みを行う。

〈研修結果〉
 今回視察させていただいた、農事組合法人「となん」は耕作規模、構成農家数ともに日本一の集落営農組
織と位置付けられています。
我が野木町においても多くの集落営農組織が構成され営農が行われていますが、法人組織の形態に進展して
いる団体はわずかに1組織です。行政は「法人化を進める」という施策を掲げているところですが、なかな
か具現化していません。
農業にまったく縁のない私として説明を拝聴し感じたことは、次のとおりです。
産業分野、農業分野にかかわらず法人組織の運営を行うにあたっては、しっかりとした「経営理念」と「事
業方針」に基づく事業運営と組織運営が行われる必要があるということです。
また初代組合長の熊谷 健一氏に代表されるように、元気農業には「元気なリーダー、人物がいる」という
ことです。
誰かがやってくれるだろという依存意識を排除しなければなりません。
目的と問題認識を一つにして一丸として取り組んでいくことでしょう。
これらの環境条件をどのように整えていくのかが、法人化に向けての環境整備につながると考えます。
補助金交付以前の課題ではないでしょうか。
 また、日本一の農事組合法人「となん」と言えども事業経営にあたっては、国等の補助金、交付金等を抜
きには成り立たないという現実です。
将来的には、事業として成り立つ農業の確立を目指していますが、実現に向けてはなかなか大変なようです。                                           


研修―2
訪問先:  青森県八戸市
      八戸ブックセンター、八戸ポータルミュージアム
      八戸中央青果株式会社
対応者:  音喜多 信嗣ブックセンター所長
      ボランティア(ポータルミュージアム)2名
      横町 芳隆社長  山本 正志取締役特産統括部長
      宮古 春男執行役員特産部長

(参考情報)
八戸市の概要:
所在地:  〒031-8686 青森県八戸市内丸一丁目1番1号愛知県知多ケ坪18
面積 :  305.56㎢ 
人口 :  令和2年4月30日現在 226,477人(109,191世帯)
予算 :  令和2年度当初予算
      歳入  98,000,000千円
          主な内訳: 市税      29,700,000千円(30.3%)
                地方交付税   17,544,000千円(17.9%)
                国庫支出金     20,676、858千円(21.1%)
                                     市債        10,262、100千円(10.5%)        

      歳出  7,317,698千円
       主な内訳: 議会費      593,864千円(0.6%)
                総務費  5,633,720千円(5.7%)
            民生費  37,057,114千円(37.8%)
            衛生費  10,680,660千円(10.9%)
            労働費     160,190千円(0.2)
            農林水産業費 2,038,275千円(2.1%)
            商工費    2,917,601千円(3.0%)
            土木費    13、926,008千円(14.2%)
            消防費    3,149,199千円(3.2%)
            教育費    12,620,055千円(12.9%)
            公債費    8,776,917千円(9.0%)
議会:
   議員定数  条例定数 32人  現在数32 人
   会派制   6会派
   委員会   常任委員会(総務:8人、経済:8人、民生:8人、建設:8人)
         議会運営委員会:12人
   報酬    議長:687、000円   副議長:626,000円
         議員:597,000円  監査委員:55,800円(月額)
        (参考:三役報酬)
         町長:1,062,000円  副町長:856,000円
         教育長:714,000円   監査常勤委員:552,000円
   政務活動費 月額8万円×所属議員数×12月
 

〈研修概要〉

 1.八戸ブックセンターについて
  八戸ブックセンターは、市長の政策公約に掲げる「本のまち八戸」を目指す取り組みの、乳幼児(生後9
 0日~1歳未満)とその保護者を対象とした「ブックスタート事業」、小学生を対象とした「マイブック推
 進事業、また、3歳児とその保護者向けに新たに創設した「“読み聞かせ”キッズブック事業」に続く、大人
 を主な対象とした施設です。
  また、八戸ブックセンターは中心市街地の活性化に寄与するとともに、市民の豊かな心を育み、本のある
 暮らしが当たり前となる文化の薫り高いまちを目指すため、本と出会う新たな機会の創出、本を通した市民
 交流及びまちづくりの拠点施設としても位置づけられています。
  施設運営の基本方針は、
 方針1:本を「読む人」を増やす
 方針2:本を「書く人」を増やす
 方針3:本で「まち」を盛り上げる、です。
  民間ビルの1階に所在し、運営は市が直接行っております。
 同じ階にはコーヒーショップ、フラワーショップが、また2~3階にYHA00が入居しています。
  施設面積は315㎡、陳列約8,000冊、セレクトブックストア(入門・基本図書棚、普遍的テーマ棚、
 フェア棚、ひと棚、本のまち棚)、読書会ルーム、カンヅメブース、ギャラリーほかが配置されています。
  2018年予算によると、売上1,600万円、経費9,800万円となっています。
 民間書店と連携し、本購入の取次などは民間書店を紹介するなど民業圧迫とならないよう工夫しています。

2.八戸ポータルミュージアムについて
  八戸ポータルミュージアムは、来館者が観光などのために、実際の八戸に足を踏み出す玄関(入口=ポー
 タル)としての機能を担う施設であるとともに、市民の創造活動の拠点として、その本質に触れることがで
 きる博物館((=ミュージアム)のような機能を担う施設です。
 市所有施設であり、
  敷地面積:約3,387㎡
 建設面積:1,653㎡、地上5階建て
 土地購入・建物建設で約47億円(内建物約33億円)
 年経費1.5億円
 平成23年2月11日に開館しています。
  「はっち」という愛称は、公募から生まれ、八戸の“はち”から派生した「はっち」であり、市民にとって最
 も身近な言葉のひとつでもあります。
 また、英語の、卵のふ化や出入り口などを意味する“hatch”にもちなんで名付けられています。
  地域の資源を大事に想いながら、まちの新しい魅力を作り出すところ、ソウゾウ開花のために具体的に3つ
 の事業を展開しています。
  ① 会所場づくり
   多様なひとや情報の交流に開かれ、地域の文化に触れる場。
   → こどもはっち
   → はっちひろば・リビング
   → カフェ・ショップ
   → 観光展示ほか
  ② 貸館事業
   創作活動をサポートする施設の貸出と人的サポートの提供。
   → シアター
   → ギャラリー
   → 各種スタジオ
   → レジデンスほか
  ③ 自主事業
   地域資源を活かした事業のプロジュースにより新しい価値を創造。
   → 中心市街地賑わい創出事業
   → 文化芸術活動振興事業
   → ものづくり事業
   → 観光振興・フィールドミュージアム八戸推進事業

3.八戸中央青果株式会社について
  八戸中央青果株式会社は、昭和7年の「八戸農産市場」の開設にさかのぼります。
八戸農産市場は、昭和初期の経済不況の下、疲弊した農村や産業の救済・振興と、農産物の公明な取引を図
るために、三戸郡農業会が発起人となり、近郷農家の有志と青果物業者の出資により、青森県で最初の青果
市場として誕生しました。
 昭和16年、八戸成果㈱に社名変更。戦時中の経済統制下には、青森県生鮮食料品荷受機関として、県南
地域の青果物配給業務を担当しました。
 昭和52年、八戸市中央卸売市場の開設にあたり、八戸中央青果㈱を設立、農林水産大臣の許可を得て、
青果物荷受機関として卸売業務を引き継ぎました。
卸売業務を引き継いできただけではなく、地域農業の進行と地域住民への青果物の安定提供という創業の理
念、売り手側と買い手側の双方のDNAを持つ公平・公明・公正な基本姿勢を引き継いできています。
「郷土を愛し、郷土のために働く」という思いは情熱となり、受け継がれ、「情熱市場」という社風を表す
代表的な言葉に表されています。

<会社概要>
 設立:昭和52年7月25日
 資本金:1億円
 従業員数:105名
 所在地:青森県八戸市河原木
 年商:令和元年度 197億円(販売取扱高)
    *実質売上高は197億円×8.5%(手数料相当)=16,7億円
 グループ企業:八戸農産物流㈱(農産物リンゴの生産・販売並びに輸出入)、八戸農産加工㈱(農産物の
        生産・加工・販売)、八戸市場運輸㈱(農産物の集荷配送)、㈲まるはちビジネスサービ
        ス(農産物及びその加工品の販売)、㈱ベジフルエイト(カット野菜の製造販売)、㈱フ
        レッシュエイト(青果物の販売・カットフルーツの製造販売)

(研修結果)

  八戸ブックセンター及び八戸ポータルミュージアムについては、中心市街地活性化の拠点としての機能
を併せ持つ施設という性格もあるため、その事業に関わる費用と効能の面に着目して論じることは相応しく
ないかもしれませんが、ブックセンターについては年間差額で約8、000万円の維持費が掛かり、またポ
ータルミュージアムについては建設費等47億円、年間約1.5億円の維持費が掛かることを考え合わせる
と、到底野木町のような財政力が小さな町では困難な施策とおわれます。巷では文化芸術の振興(又は趣向)
は金銭的に余裕がなければできないと言われているようですが、当該施設を視察してその思いを強く感じさ
せられた次第です。
また常々、わが町においても中心市街地の拠点となるような施設が必要であると感じていることもあって、
反面羨望を覚えた次第です。
 また、我が町では、唯一あった書店が閉鎖してから数年が経ちます。
今回の視察により行政においても問題なく民業的な書店業務を行えることが分かりましたので、少なくとも
図書の取次業務を町図書館で実施する方向で検討を進める余地があると思います。
 八戸中央青果株式会社については、日頃まったく農業ビジネスに縁のない私にとって大いに参考となる視
察になりました。
市場の仕組みを理解できただけでなく、社員の皆様に接し、市場関係者についての認識を新たにしました。
「情熱市場」という社風にもよるのでしょうが、社員の皆様のビジネス精神=サービス業に徹した姿勢、考
え方により、これまで漠然と持っていた市場関係者に対する大柄さや不愛想さなどのイメージが完全に覆り
ました。
 また、市場の仕組みとして、市場を通さずに消費者に届く商品が増えると、一方では、市場業界が縮小し、
結果として一部の雇用が失われることになるとともに、長期的に見たときに農産品の価格が安価な状態で推
移することに繋がらないということを知りました。
結果として消費者にとってのメリットにはならないことになるようです。

                                 以上