平成27年10月15日(木)、16日(金)の日程で「文化財の利活用について」を調査するため文教民生常任委員会先進地視察を実施しました。
目的は、町重要文化財「野木町煉瓦窯」を教育・観光資源とした利活用のあり方について、先進地を視察し調査することにあります。
視察先は埼玉県深谷市・長瀞町、群馬県富岡市です。
視察事項としましては以下の通りです。
深谷市:文化財の利活用について
・煉瓦窯の位置づけについて(教育と観光)
・保存方法の今後の取り組みについて
・煉瓦窯を活かした町づくりの取り組みについて
(まちづくり条例の制定と効果)
長瀞町:観光に関する官民一体のまちづくりについて
・自然遺産等を活かした観光施策の変遷と今後(計画)
・文化財の利活用について
富岡市:文化財の利活用について
・文化史跡の活用とまちづくり(周辺地域との連携)
文化史跡の保存と観光資源への活用(経緯と計画)
文化史跡周辺地域との連携(宿泊施設・商業活動の助成等)
・世界遺産登録前後の比較
行政対応(組織機構。施策等)
民間活動(観光客数・商業活動)
次に、訪問先において説明を受けた内容について概要を報告します。
◆深谷市
(市の概要)
・ 現在の当市は平成18年1月1日、深谷市、岡部町、川本町、花園町がひとつになり
誕生しました。
・ 平成27年4月1日現在、人口 145,406人、世帯数57,143世帯、産業
別人口 第1次8.8% 第2次30.5% 第3次56.4% 分類不能4.3%で
あり、特筆する産業は野菜・花卉です。
・ 平成27年度一般会計予算(当初)は46,639,913千円です。
(議会の概要)
・ 議員数は、条例数 24人 現員数 24人です。
・ 議員報酬は、議長 492,000円 副議長 428,000円 委員長
418,000円 議員 403,000円
・ 政務活動費は、月額 25,000円 年額 300,000円
(視察等の概要)
・ 明治21年に日本資本主義の父と呼ばれる渋沢栄一翁により日本煉瓦製造株式会社が
設立されました。
会社は平成18年に自主廃業し、文化財(ホフマン輪窯6号窯、旧事務所、旧変電所、
備前渠鉄橋)とその敷地のみが市に帰属しています。
製造レンガは、法務省赤レンガ棟、旧東京駅駅舎、迎賓館など、多数の洋風建築物に利
用されました。
・ この歴史的背景を踏まえ、翁の顕彰とレンガを活かした個性あるまちづくりを市民と
共に進めることを目的に「深谷市レンガのまちづくり条例」を平成8年1月1日に施行
しています。
条例のポイントとしまして、建造物の外壁にレンガ等を使用した場合、建築主に奨励金
を交付します。
レンガ等とは、レンガ又はレンガ調タイル
交付金① レンガ等の使用面積割合に応じて交付する
80%~100% 固定資産税・都市計画税 相当額
50%~80% 同上 2分の1
25%~50% 同上 3分の1
交付金② 既存レンガを10㎡以上使用した場合、1万円/㎡加算
奨励金の交付実績
指定件数:40件
その外公共建築物 15施設
・ 歴史のみちモデル地区(埼玉県指定)
平成23年度から県・市・NPO等と協働して旧街道や旧宿場町などに埋もれている歴
史的景観資源を保全・活用する「歴史のみち広域景観形成プロジェクト」に取り組んで
います。
深谷市の中山道周辺
七ッ梅酒造跡 深谷れんがホール
・今後の課題としまして、
■ 条例指定の建築物が分散していること
→ 一部地域に特化してレンガ街を構築する方向を検討
■ 奨励金の上限額がないこと
→ 予算に制約もあることを考慮し上限額を設ける方向を検討
■ 指定件数が少ないこと
→ 建築価格が割増しになることからインセンティブが弱いと考えられるため再検討
が挙げられていました。
◆長瀞町
(町の概要)
・ 現在の町は昭和47年11月1日の旧野上町からの町名変更によって発足しました。
名勝及び天然記念物「長瀞」を象徴した町です。
・ 平成27年10月1日現在、人口 7,529人 世帯数 2,905世帯です。
・ 平成27年度一般会計予算(当初)は3,256,558千円です。
(議会の概要)
・ 議員数は、条例数 10人 現員数 10人です。
・ 議員報酬は、議長 247,000円 副議長 193,000円 委員長
182,000円 副委員長 180,000円 議員 177、000円
(視察等の概要)
・ 当町は、東京都心から約2時間圏内にあり、全域が県立長瀞玉淀自然公園に指定され
国指定名勝及び天然記念物「長瀞」や宝登山などの観光資源に恵まれ、年間230万人
が訪れる観光の町です。
・ 観光施設等の維持管理事業として、
① 町観光情報館の案内業務については、町内の観光内容を把握している観光協会へ委
託しています。
② 観光トイレは訪れた観光客に快適に利用できるよう清掃等については、町観光協会
へ委託し実施しています。
③ ここ数年、町を訪れる外国人観光客が多くなっていることから、国及び県の補助等
を活用して多言語観光案内板の整備や電子透かし読み取りアプリ「POPITA(ポピ
タ)」の整備を行っています。
④ 2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて訪日外国人観光客
の急増が見込まれる中、スマートホン等の普及により、高速インターネット利用が可
能なWi- Fi環境の整備が求められていることから、長瀞地区38箇所の「光ステー
ション」を設置しています。
・ 快適で美しい観光地づくりのため、町観光協会を中心として、次に取り組んでいま
す。
① 花いっぱい推進事業
・ 公共的な場所への花の植栽及び支給
・ 国県道及び町道沿線への花壇の整備
・ 花いっぱい運動協力団体や行政区へ花や植栽に必要な資材等を支給し、植栽や維
持管理についてはボランティアで実施ています。
② 長瀞八景管理事業
・ 自然景観の保全とその観光資源化、花を生かした観光地づくりを推進するため、
町で指定した長瀞八景指定地周辺の整備を実施し、美しく、快適で、魅力ある観光
地作りを図っています。
③ 桜管理事業
・ 桜を保護し、健全に育成するため、きめこまやかな維持管理を行い、日本さくら
の名所百選に指定された桜の名所にふさわしい観光地作りを図っています。
南北の桜通り、野土山、通り抜けの桜等の維持管理
④ 観光情報の提供
・ 観光客が安全で快適に観光ができるよう、多様なニーズに対応した情報を提供す
ることで観光客への利便性を図っています。
テレビ・ラジオ・新聞等への情報提供及び取材協力
インターネットによるリアルタイムな情報提供
観光案内所による観光案内業務
観光パンフレット配布による観光情報の提供
長瀞駅前モニュメントにおいて映像による観光情報の提供
⑤ 自然環境・景観の保全
・ 自然公園特別地域内の工作物の新築等に係る許認可申請の進達に際して行う現地
調査、当該許可の事項に関する履行状況の調査指導、自然公園内保護管理のための
巡視を行っています。
・ 松くい虫防除事業
⑥ 長瀞観光魅力アップ計画の策定
・ 平成12年度において、地元観光業者や町内外の専門家からなる「長瀞町観光魅
力アップ対策審議会」を設置し、長瀞観光の直面する課題を把握し、観光に新たな
魅力を付加するために計画の策定を行っています。
⑦ 散乱ゴミのパトロール
・ 週1日間散乱ゴミ等のパトロールを実施し環境美化に努めています。
⑧ 岩畳の清掃作業
・ 名勝天然記念物の岩畳周辺を、週1日清掃作業を行っている。
・今後の課題としまして、
■ インバウンドへの対応強化策の検討と実施
■ 町長が先導している岩畳を跨ぐ架橋の設置の是非を挙げています。
◆ 富岡市
(市の概要)
・ 現在の当市は昭和29年4月1日、甘楽郡1町4村が甘楽郡富岡町へ編入し、市制を
施行し、富岡市となりました。
・ 平成27年5月1日現在、人口 50,665人、世帯数19,626世帯です。
・ 平成27年度一般会計予算(当初)は20、414、500千円です。
(議会の概要)
・ 議員数は、条例数 18人 現員数 18人です。
・ 議員報酬は、議長 435、000円 副議長 390、000円 委員長
370、000円 副委員長 365、000 議員 360、000円
・ 政務活動費は 年額100、000円
(視察等の概要)
・ 「富岡製紙場と絹産業遺産群」につきましては、平成17年に富岡製紙場が片倉工業
株式会社から当市に譲渡され、国史跡に指定されました。
昨年平成26年に「富岡製糸場と絹産業遺産群」が世界文化遺産となりました。
・ 市役所の富岡製糸場の運営体制(平成27年度)につきましては、世界遺産部の下に
富岡製紙場保全課、富岡製紙場戦略課、観光おもてなし課の1部3課の組織体制で運営
されています。
・ 現場での対応としましては、
高岡製紙場における見学券の販売、見学者の案内、売店管理、団体予約受付は㈱まち
づくり富岡に委託し、監視・警備、清掃はシルバー人材センター(一部を警備会社)に
委託しています。
まちなか物産館売店管理は㈱まちなか富岡に委託し、市営駐車場(案内)、交通整理は
警備会社に委託しています。
・ 見学者受入れ体制につきましては、
団体予約方法はネット予約で料金も決済し、時間別管理の徹底を図っています。
見学券の販売は正門内の他に、まちなか観光物産館でも行っています。
解説ガイドツアーは有料で、団体はネット予約決済(3,500円)、個人は自販機で
チケット購入(200円)、また解説員の手配は業者に委託しています。
場内の売店、案内等おもてなしは委託業者にて対応しています。
トイレは従来場内1箇所であったが、場内に2箇所増設してあります。
見学コースは建物内で激しい混雑状況であったため、見学コースの拡大と区分化を図っ
てあります。
・ 来場者数は昨年の登録により飛躍的に増加しています。
平成24年度 287,338人
平成25年度 314,516人
平成26年度 1,337,720人
・ 富岡市への観光客の入込数も増加しています。
平成24年度 2,190,601人
平成25年度 2,177,215人 -13,386人(0.6%減)
平成26年度 1,337,720人 +962,123人(44.2%増)
・ 世界遺産登録る経済効果は、一般財団法人群馬経済研究所による平成25年11月の
試算によると、観光客数 74万人/年として34億円の経済波及効果が見込まれてい
ます。
直接的な雇用増に結びついているのかは明確でないとのことです。
・ これまでの主な取り組みとしましては、次のことを行ってきているとのことです。
① 市営駐車場の整備と交通対策
・ 市営駐車場の整備と活用
宮本町駐車場(普通車80台:有料)、上町駐車場(バス15台・普通車30
台:有料、バスは乗降専用)、仲町駐車場(バス5台:有料予約バスの乗降専
用)、富岡駅駐車場(普通車300台:無料)、内匠駐車場(上町、仲町で乗降
させたバスの待機場)
・臨時駐車場の活用
富岡市保健センター(普通車130台:土日休日のみ)
民間企業社員駐車場1(普通車188台:日休日のみ)
民間企業社員駐車場2(普通車500台:日休日のみ)
② 民間駐車場の活用状況
13箇所で計235台収容
③ 高速バス富岡IC停留所からのアクセス確保
国交省補助事業によるバス運行試験
④ 製紙場周辺の景観形成への取り組み
景観行政団体へ移行 平成17年度
景観計画策定 平成18年度~20年度
景観条例・計画施行 平成21年度
富岡市景観形成助成金制度 平成21年度~
景観ガイドラインの制定 平成23年度
屋外広告物条例施行 平成24年度
・ 今後の課題としまして、
■ 富岡製糸場を核としたまちづくり
■ 富岡ならではの食、土産物の開発とブランド化
■ 観光客が特定地域に集中しているので、市域全体への回遊策
■ 他の施設、市町村との連携
■ インバウンド対策(Wi-Fi対応、国際規格のサイン設置)を挙げています。
★重要な質疑ポイント
・ 富岡製糸場の入場料収入は年間およそ9億円を見込めるということでしたが、事業
として見た場合に採算性はどのような状況にあるのか聞いたところ、人件費等の経費
総額はおよそ5億円であり、差額4億円を後年度の設備改修費用として積み立ててい
るとの説明でした。
・ 建造物の保存管理・整備活用に係る費用は、平成27年から平成36年までの10
年間で約102億円と見込まれていますが、その費用負担はどのように考えているの
か聞いたところ、国50%、県25%、市25%の分担になるので、それでも市とし
て約25億円を負担することになり、見学料だけでは、まかなえないため皆さまから
のご寄附を活用させていただくことにしたいとの説明でした。