文科省「公立高校を核に地域人材育成のモデル事業」の記事を見て!

 本日(8月2日(木))の下野新聞朝刊に、次の記事が掲載されていました。
 「文部科学省は1日、各地の公立高校を核に、地域を支えていく人材を育成するモデル事業を2019年度
から始める方針を決めた。地元自治体や企業などと緊密に連携した推進体制づくりを促し、地域振興に関する
実践的な授業を展開。進学や就職時の地元離れを食い止め、東京一極集中の是正につなげる。・・省略・・将
来の本格展開には、地域活性化に取り組む他省庁との協力強化とともに、各地でも財政や人員面で国の支援に
頼らず自発的な取り組みを維持できるかが問われそうだ。文科省によると、通常の教科に加えて特別な授業を
実施。自治体、起業やNPO法人、大学などが協力し、「商店街の活性化」「観光資源の活用」「高齢化で増
大する介護ニーズへの対応」などの課題を取り上げる。生徒たちに現実社会のさまざまな課題を示しながら、
自ら考え行動し、解決していく力を身に付けさせる。」というものです。
 地域活性化を推進するに当たっては、その地域活性化に向けた活動を展開するにおいて中核となる人材が必
要であると常々考え、一般質問等の機会に執行部に対して提言してきました。
 この記事を目にし、文科省でもいよいよ具体的な事業を展開することになったのか、と好意的に読ませてい
ただきました。
より詳細な内容を知りたいと思ってインターネットで検索してみたのですが、残念ながら記事以上には、具体
的なモデル事業の内容を知り得ることはできませんでした。
 そのため、現時点で意見を掲載するのはいかがなものかと考えたのですが、わが町が置かれている状況を踏
まえ、感じたことを述べさせていただきます。

 最初に思ったことは、中央省庁特有な縦割り主義による予算獲得的な施策ではないかということです。
この点については、地方創生担当大臣が任命されていることや、財務省主計官による事前の予算段階での省庁
折衝をクリアーする見通しを得た上での新聞報道になったものと推察しますので、一応担保されているものと
理解します。

 次に、中心となる事業目的はどこにあるのかということです。
記載されている文言には「地域を支えていく人材を育成するモデル事業」と「進学や就職時の地元離れを食い
止め、東京一極集中の是正につなげる。」との表現が記述されています。
これを読んだ限りにおいては、モデル事業によって終局的な目的に繋げるような関係にあるように受け取れる
ものの、主目的がどちらにあるのかが、判然としません。
目的をどこに置くかによって、対処すべき課題が異なると想われるため、自ずと展開する事業は違ってくると
考えられます。
高校卒業後の進路を見た場合に大学進学者が大半となっている現況を考えるならば、高校が立地する地域の人
々との連携を涵養することの重要性は認めるものの、果たして将来的にその関係を維持していくことができる
のか、また将来の人生設計に係わる問題でもあり、地域への愛着・誇りを涵養するということでは解決できな
い問題ではないかと考えます。

 また次に、「地域を支えていく人材」という定義についてです。
「地元で支えていく人材」ということなのか、「どの地域に行っても貢献できる人材」ということなのかによ
っては、人材が具備すべき知識や経験は違ってくると考えられるため、実践的な授業の内容は異なってくるも
のと想われます。
わが町のように地元に高校が存在しない町では、他地域というフィールドで実践授業を受けざるを得ないた
め、「地元を支える人材」といっても直接的な関係での体験にはなり得ないことです。
他自治体から通学している学生に対する配慮と、施策における工夫が求められると考えます。

 更に、記事において指摘されていますが、「地域活性化に取り組む他省庁との協力強化」という点について
です。
「地域を支える人材」としてはすでに、各自治体において開校されている「シルバー大学(老人大学などと呼
称している場合もある。)」の卒業生が潜在的な人材として存在していると理解します。
この度の文科省のモデル事業で想定されている連携機関に該当しているのかは判然としませんが、ここの卒業
生は、公立高校の所在の有無に関係なくどの地域にも在住していると想われます。
社会経験を積んだ方々が地域活動の中核的な人材となるべく体系的な研修を受講していますので、地域を支え
る人材としては最適な存在です。
高校生が現実社会のさまざまな課題を、自らが考え行動し、解決していく力を身に付けていく上で、大いに貢
献できる方々では、と考えます。
過日の一般質問においても取り上げたところですが、わが町にも多くの卒業生が居られますので、これらの方
々の力を活用できる仕組みを構築すべきです。
具体的には、公民館の運営や、地域活動の中核的な人材を育成する役割を果たしてもらうことが考えられま
す。
シルバー大学OB・OGの野木支部が結成されていることでもあり、町としてシルバー大学的な組織を構築
し、その運営を委託する方法も一つの方策と考えます。

 高校が存在しないわが町では、執行部にとって文科省のモデル事業が希薄になりかねないと推察されること
から、今後ともモデル事業の動向と執行部の対応を注視していきたいと思います。