ワクチン接種計画の変更等の混乱で感じること!

 新型コロナウイルスワクチンの供給を巡り、政府と自治体で混乱が生じているということがマスコミで取り
上げられています。
国は、当初約束した量のワクチンは供給しており、在庫がどこかで滞っているに過ぎないと、また自治体は、
当初約束された供給量を前提にした接種計画を立てたが、国からの供給減少を受け、「予約受け付けの停止・
延期」「接種計画の見直し予約枠の縮小」などの接種計画を見直しせざるをえなくなっているという主張で
す。

 これらに関するテレビ等での関係大臣の発言を聞いていると、概論的な説明に終始しており、具体的なデー
タに基づいた説明がなされていません。データに基づいた説明があれば、国、自治体のどちらの発言が事実性
があり、問題の所在も明確化し、国民にとっても容易に理解できるため安心感を持てることになります。
 データに基づいた説明が可能となるためには、国の供給量と自治体の接種計画に基づく要求量と在庫量を把
握することが求められます。
 このような一連のフローを管理するICTを活用したシステムがあれば容易なことではないかと、なぜそのよう
な管理システムを活用し把握したデータに基づいた説明と議論がなされないのかという疑問を持っていました。
 その疑問については、先日の下野新聞記事「システム2種混乱の一因(R3.7.17(土)付」を読んで納得しまし
た。
 記事によると「政府と自治体で在庫量の認識に差があるのは、政府が2種の異なるシステムで在庫を把握して
いるのが一因であるが、政府関係者への取材で分かった。当初はワクチンの配送と接種実績を単一システムで
管理していたが、接種実績はマイナンバー(個人番号)を活用する新システムへ移行したため、未使用のワクチ
ンがどこにどれだけあるのか迅速に把握できなくなっているという。国が全国の自治体や医療機関に配送したワ
クチン量や行き先といった情報は、厚生労働省が管理する『ワクチン接種円滑化システム(V-SYS)』に登録さ
れる。医療従事者以外の一般の人の接種実績は、個々人に割り振られたマイナンバーを活用した『ワクチン接種
記録システム(VRS)』に記録され、内閣官房が管理している。在庫量を把握するには、配送した量から接種し
た量を差し引く必要があるが、両システムが連携していないため、それぞれから接種会場ごとの数字を取り出し
て突き合わせる必要があり、手間がかかるという。」ということです。
 この記事を前提にするならば、現在の状況を正しく表しているのは自治体の主張と考えざるをえません。ここ
で重要なことは、お互いの主張の正しさを議論することではありません。この実態から何を学び、次にどのよう
に活かしていくかだと思います。
 学ぶべきことは、次のことではないでしょうか。
① 国も自治体も国民・住民が納得できるように説明責任を果たすということです。
  お互いに責任を擦り付け合うような説明は必要ありません。国民・住民が安心するような正確な情報を提供
 することです。
② ICT活用を積極的に進めることです。
  課題はあるにしても情報を把握するためのシステムが用意されていたことはまずは良しとすべきですが、残
 念ながら真の情報把握に活かせるようなリンクが図られたシステムが確立されていないということです。縦割
 り政府の弊害が垣間見られる事例だと思います。9月にはデジタル庁がスタートすることになりますので、庁
 の役割を発揮する上でもポイントとなる象徴的な事象だと考えます。
  また、既存システムの活用ということを考慮するならばやむをえないことかもしれませんが、システム設計
 上は、国の活用性と自治体サイドの活用性を考慮したシステムとなることが求められます。
③ 自治体におけるICT活用の在り方です。
  国における管理システムの現況については前述したところですが、県庁と市町村間の情報管理はどのように
 行われているのか、そのためにICT技術は活用されているのかです。現状の状況を示す発言が自治体から発せ
 られているということを勘案すれば、当然何らかの情報管理システムが県単位内で構築され活用されていると
 推察しますが、これもシステム構築上は47都道府県に共通的に適用できる汎用システムという性格を有する
 と考えられますので、前記②にも係わってくることと思います。
④ 政府の対応を改める必要があります。
  政府の対応については、垣間見られる省庁間の縦割り(各担当大臣)の壁を排除することと、首相の思い
 (PR姿勢)とのギャップを極力なくす必要があると思います。実現できることであれば政策として価値を持
 ちますが、裏付けのない政策では単なる人気取りとの評価になりかねません。国民にとってはなんら意味のな
 いことです。