9月27日午後2時から、茂木町役場において、栃木県町村会主催による「都市・農村共生社会創造シンポ
ジウム in 栃木」が開催されましたので、議員及び農業委員の有志で拝聴してきました。
県内全町長11名が参加されていました。
開会宣言、主催者あいさつののち、基調講演と座談会が行われました。
基調講演は、次のテーマで行われました。
(1)基調講演1
「『田園回帰』を拓く ~全国町村長会提言がめざすもの~」
講 師 福井県町村会長 池田町長 杉本 博文 氏
(2)基調講演2
「誰もが主役になれる町 邑南町(おおなんちょう)へようこそ」
講 師 島根県町村会長 邑南町長 石橋 良治 氏
◇ 基調講演1の講演内容
2014年9月に全国町村会が発表した提言「農業・農村政策のあり方についての提言 都市・農村共
生社会の創造 ~田園回帰の時代を迎えて~」について、以下の説明がありました。
〇 池田町とはどんなまち?
□ 福井県内陸部に位置し岐阜県に接した盆地地形
・面積:194.65㎢
・人口:2,852人(H27.4.1現在)
・世帯数:986世帯(同上)
□ 財政規模(H27年度)
・総予算 45億3,190万円
・一般会計 31億3,680万円
・町税ほか 2億8,677万円
・地方交付税・交付金など 15億4,653万円
〇 提言策定の動機
□ 新たな局面を迎えた「農業政策の変革期」と「農村政策の転換期」との認識
□ 「農村に潜在する多様な価値」「農業の多面的な機能」→ 再興の潮流
□ 農村回帰・田園回帰の顕在化
□ 好機との自覚・決意と覚悟
〇 今からの農村政策と農業政策のあり方
□ 国と町村の「相棒化」と「分担化」、そして町村の「自主権の確保」
□ 画一政策から多様性を認める農業政策
□ 「都市の安定」と「農村の安心」を育む共生社会の再生
□ 安全・安心を担保する農業生産と「国産国消」の国民合意づくり
□ 農業の総合産業化・農村の文化産業化
□ 価値の経済の証明・地域循環経済の構築
〇 地方創生に挑む
□ 「常に都市に憧れた時代から 都市住民が農村に憧れる時代が始まった」
□ 「田舎暮らし」から「田園回帰」への潮流
□ 「消費される人間から、仲間社会へ!!」
(GDPにカウントされない豊かさを知り始めた)
□ 「日本人の日本探し!!」
(農村の価値が都会の魅力に勝りはじめた)
□ 観客民主主義からプレイヤー民主主義へ!!
□ まちの宝を「感じる力・見抜く力・活かす力」
(チルチルミチルの青い鳥)
□ まち育て「天の岩戸 神楽化」
□ 「あたりまえがふつうにあるまち」
「住みたくなるまち、訪れたくなるまち池田」を目指して挑む!!
◇ 基調講演2の講演内容
「誰もが主役になれる町 邑南町へようこそ」というテーマで、以下の説明がありました。
〇 売り出し~ここからが始まり
□ あさイチ、あさチャンなどのメディアに注目され、目指す邑南町の定住対策の取り組みが全国放送
された。
□ 行政と民間の協働による活発な婚活イベント
〇 邑南町はどんなまち?
□ 島根県中央部の山間にある自然豊かな町(スイスのような風景)
・盆地の多い地形
・標高:100~600m
・面積:419.22㎢
・人口:11,394人(H28.4.1現在)
・世帯数:5,007世帯(同上)
・高齢化率:42,3%
・主な産業:農林業
・石見地域、瑞穂地域、羽須美地域がH16年10月1日町村合併 今年で合併12周年
□ 財政状況
・歳入総額 151億5,631万円
地方交付税 68億1,612万円 依存財源121億8,497万円(80.4%)
・歳出総額 141億9,252万円 民生費 25億9,991万円(18.3%)
教育費 10億6,769万円(7.5%)
〇 合併後のまちづくり~地域力の醸成
□ 基本理念
・住民が主役・・・・まちづくり基本条例の制定(協働のルールづくり)
・周辺を大切に・・・集落が基本単位(216集落)
自治会の結成(39自治会)
自治会担当職員の配置(情報の共有)
・学びながら地域づくり・・・公民館の配置・職員3名体制
夢づくりプラン(自ら課題抽出→解決)
・合併後の一体感をどう高めるか・・・ケーブルテレビの解説(加入率96%)
□ 町民の満足度 ~ビレッジプライド アンケート結果
・町民の生活満足度 84.1%(全国平均値64.1%)
・とても満足の回答(36.7%)のうち食べ物がおいしいと回答した町民85%
□ 邑南町は「持続可能なまち」を目指している!
・年少人口 0~18歳人口 1,660人(H22) 1,700人(H28)
1,800人(H33)
・高齢化率と年少人口割合 H27年 高齢化率 42.2% 年少人口割合 10.43%
・20~30代女性のU・Iターン者数 26名 (H27年度のU・Iターン者総数100名)
・H27年 合計特殊出生率2.46 栃木県1.48 全国平均1,46 野木町1.34
*人口を維持するためには合計特殊出生率2.07以上になる必要があるといわれ
ています。
政府の地域創生戦略での目標値は1.8です。
出生数70名(前年度68名)
□ 攻めと守りの定住プロジェクト(H23年度~)
① 攻めのA級グルメ構想 5年間
・邑南町の「A級=永久」のイメージを発信→100年先の子どもたちに伝えられる邑南町の
食文化
・数値目標
食と農に関する5名の起業家輩出→27名
定住人口200名の確保→213名
観光入り込み客数100万人の実現→92万人
・A級グルメ構想
官民共同による食と農を中心とした産業振興ビジョン
→地産地・外商レストランによる経済循環・・・町内レストラン、町内店舗アベル内レスト
ラン、広島三越内レストラン(広島)
→地域おこし協力隊(総務省)による外部人材の活用
・・・ターゲットを絞った地域おこし協力隊
→ 田舎だからこそできる食の本物の人材育成
・素材香房
中四国地方唯一のイタリアン認証レストランで一流の技術が学べる
・食の学校
食の6次産業の推移に向けた食の研究開発、テストマーケティング
・食のプロが指導
黒越 勇 氏(町立食の学校 校長)
世界料理五輪金メダリスト
→地産地・外商レストランによる経済循環・・・山形県のアル・ケッチャーノと共同経営
アンテナSHOP
② 守りの日本一の子育て村を目指して 10年間
・身近な安心な医療体制(公立邑智病院)・・・産婦人科、小児科機能充実
24時間救急受付(365日)
ドクターヘリ緊急搬送
民間病院や町立診療所等との連携
・子ども医療費の無料化(中学卒業まで)
・各種費用助成・・・妊婦歯科検診費用助成
予防歯科(フッ素塗布・フッ素洗口)費用助成
一般不妊治療費、特定不妊治療費助成
妊婦一般健康診査受診票交付
・子育て支援対策関連・・・保育料第2子目以降完全無料化・第1子目も国基準の6割
保育所完全給食(無料)
放課後児童クラブ
病児保育・延長保育、一時預保育・障害児保育
*待機児童は一人もいません
9カ所の保育所は統廃合しません
・教育 ― 「学校の統廃合しない方針を打ち出す!」
・・・奨学金制度(医療・福祉・農林業・一般)
→ 医療福祉従事者確保奨学金制度
農林業後継者育成基金(奨学金)
邑南町奨学金貸与事業
笑顔キラキラ事業(学習支援員等の配置)
ふるさとまるごと博物館
学校図書館司書の配置(全小中学校11校)
特別支援教育の推進(学習支援員等の配置)
矢上高校教育振興支援→講師は現役東大生
*ネット環境を活用したオンライン授業
・日本一の子育て村構想のための財源
・・・過疎対策事業債(ソフト事業)を活用
*H22年に過疎地域自立促進特別措置法が改正され、6年間の期間
延長(H22~H28年3月31日まで)となる。
この地方債を有効に使って、一般財源の支出を振替え、向こう5年
間の財源確保の見通しをたてた。
H24年6月の過疎法改正により有効期限がさらに5年間延長(H
32年度まで)
邑南町日本一の子育て村推進基金を造成
*H23年度に条例を制定し、2億5千万円を積立て、過疎法の終了
後の財源を準備(H24年度末で約3億130万円に積み増し)
③ 徹底した移住者ケア
・UIターン者ケア・・・定住支援コーディネーター(職員男女2名)
+ 定住促進支援員(人望が厚く地域の状況に精通している人)
*移住前・移住後のUIターン者が地域になじめるように相談窓口
・定住促進支援員との協働・・・町定住支援コーディネーターとの連絡調整
空き家の調査、開拓ならびにデーターベース作成支援
移住希望者と集落との話し合いの調整及び指導、助言
移住者が地域で円滑な生活が始められるよう調整ならびに支援
・子育て支援サービスにポイント・・・町内商工会内の商店などが運営している買い物ポイント
制度との連携
*子育てサービスを利用するだけで、ポイントが貯まり、
貯まったポイントは、1ポイント=1円として町内の
お店で買い物ができる。
〇4ケ月健診を受けると20ポイント(夫婦で行くと
40ポイント)
1歳6ケ月健診、3歳児健診、4歳児健診でもポイン
ト付与
〇有料保育サービス(病児保育2,000円、一時預か
り1,500円~2,300円)
利用料金100円=1ポイント
〇無料サービス(両親学級、乳児検診、離乳食教室、保
育所(歯科・食育)、子育て講座、子育てサロン)
来場ごとに10~20ポイント
④ 邑南町版総合戦略・・・全町の戦略の基に12地区別の戦略
・全12公民館エリアでの戦略・・・(提案事業)
ハード事業、ソフト事業ともに可
(条件)
・人口減少に歯止めをかけるための事業
・地域住民が主体となって実施する事業
(公共施設等の整備を伴う場合はその運営を地域住民
組織等が主体となって行うものであること)
・地域の総意であること
(自治会及び自治会連合会で了承されていること)
◇ 座談会
順次10名の町長から、お2人の講師へ質問を行う形式で進められました。
池田町長の杉本様へは、ご本人が5期連続で無投票当選されていることもあり、この点についての
質問が出されていました。
また、邑南町長の石橋様へは、講演内容の各施策についての質問が出されていました。
(感想)
さすがに町村会主催のシンポジウムでした。
実施されている施策が素晴らしいというより、お2人の町長が強いリーダーシップを発揮して全力で
行政運営に取り組まれている姿勢は、11町長にとってさらに勉強になったのではないでしょうか。
池田町の杉本町長が言われた「町民がすべて正しいとは限らない。できないことはできないと町民に対
してハッキリと言うことが必要である」との発言は特に強く印象に残りました。
また、邑南町の石橋町長が言われた「行政だけでは生き残れない。住民が主役になるという意識がない
と地方創生の実現は無理」という発言は、我が野木町においても至言であると思います。