野木町議会における政務活動費の情報公開の取扱いは?

  10月2日(日)の朝日新聞朝刊に、政務活動費に関する全国の都道府県庁所在地と東京23区の計
69市区の調査結果が掲載されていました。
その記事によれば、支出を裏付ける領収書をインターネット公開しているのは1割未満にとどまること、5
割近い議会で役所に足を運んでもすぐには閲覧できず、情報公開請求の手続きが必要であり、市民の監視の
目が届きにくい実態が浮かんだ、と記述されています。
 そこで、野木町議会における政務活動費(以後、政活費という。)の情報公開の取扱いについて取り上げて
みました。
 なお、政活費の交付については、2016年4月17日公開の「H27年度政務活動費の収支報告を完了!」
において取り上げ、説明していますので、参考にご覧いただければ幸甚です。
 
 収支報告書の閲覧については、「野木町議会政務活動費の交付に関する条例」の第14条に規定されていま
す。
  第14条 第11条の規定により提出された収支報告書は、これを受理した議長において、提出すべき期
   間の末日の翌日から起算して5年を経過する日まで保存しなければならない。
  2 何人も、議長に対し、前項の収支報告の閲覧を請求することができる

 また、同条例を受けて制定されている「野木町議会政務活動費の交付に関する規程」第9条において、「収
支報告書の閲覧について定められています。
  第9条 条例第14条第2項の規定による収支報告書の閲覧は、当該収支報告書を提出すべき期間の末日
  の翌日から起算して10日を経過した日の翌日からすることができる。
  2 条例第14条第2項の規定による収支報告書の閲覧は、情報公開主管課が指定する場所で、職員の
   勤務時間中にしなければならない。

 これらの条例、規程から明らかなように、野木町議会においては、議長に対し、閲覧を請求することができ
ることになっていますが、情報公開主管課が指定する場所で、職員の勤務時間中にしなければならないとなっ
ていますので、このことからすると、情報公開請求の手続きが必要であり、ましてやネット公開(閲覧)は想
定外です。
情報公開請求によるため、領収証に記載されている個人情報を黒塗りする作業もあるはずですので、請求から
閲覧まで時間が掛かるかと想われます。
政活費の支出額などを記した収支報告の概要についてもネット公開に至っていません。

以上のことを勘案すれば、まずは次のことを検討する必要があるかと考えます。
・情報公開請求の手続きを不要とすること
・議会事務局や図書館ですぐに閲覧が可能とすること
・そのためには、領収書の個人名や住所などの情報を黒塗りしないこと*
・少なくとも政活費の支出額などを記した収支報告の概要についてネット公開すること

 これからは、ネット公開の流れになるのではないかと思いますが、ネット公開するにあたって、領収書の個
人名や住所などの情報を黒塗りして公開するのでは意味がないと考えます。

(考察)*「領収書の個人名や住所などの情報を黒塗りしないこと」について
    会社在職時に、「ISO 27001(組織が持つ情報全般に関する認証制度)」と「プライバシー
   認証制度(プライバシーマークの取得に関する認証制度:JISQ 15001に準拠)」の認証取得
   に係わる業務を経験する機会がありました。
    その時に学んだ知識として、やや記憶が曖昧になってしまったこともありあらためて調べたのですが、
   個人情報保護に関しては、以下の8原則が標準として示されています。
   ① 収集制限の原則
     個人情報の収集には限度があり、かつ収集は適法かつ公正な手段によらなければならない。場合に
    よっては、本人の認識又は同意が必要である。
   ② データ内容の原則
     個人情報は、利用目的の達成に必要な範囲内において、正確で完全で最新のものでなければならな
    い。
   ③ 目的明確化の原則
     個人情報の収集目的は、遅くとも収集時には特定されていなければならず、その利用は収集目的(
    又は当該収集目的に反しない範囲で変更した利用目的)を達成する範囲内に限られる。
   ④ 利用制限の原則
     個人情報は、特定された収集目的を超えて開示、提供又は利用されてはならない。ただし本人の同
    意がある場合又は法令に基づく場合はこの限りではない。
   ⑤ 安全保護の原則
     個人情報の保護のために、紛失、無権限でのアクセス、破壊、利用、改ざん又は漏えいといったリ
    スクに対し合理的な安全対策を講じなければならない。
   ⑥ 公開の原則
     個人情報の取扱いについては公開するという基本方針がなければならない。個人情報の存在や種
    類、その主要な利用目的、その管理者及び所在地を明確にする手段が容易に利用できなければならな
    い。
   ⑦ 個人参加の原則
    (a) 個人情報の管理者等から、当該本人に関する情報を有しているか否か確認を得る。
    (b) 当該本人に関する情報についての本人からの求めに回答を得る(個人情報の管理者は、合理
      的な期間内に、手数料を定めた場合は合理的な金額で、合理的な方法で、かつ当該本人に容易
      に理解できる形式で応じなければならない)。
    (c) 本人の求めに応じない場合にその理由の説明を求め異議を唱える。
    (d) 当該本人に関する情報の正当性について異議を唱え、もしその主張が正しければ、当該情報
      は撤去又は訂正される。
   ⑧ 責任の原則
     個人情報の管理者は、上記①~⑦の原則を定めたルールに準拠する責任を負う。
  
     ところで、野木町においては、「野木町情報公開条例」が制定されています。
    私が思うところでは当然ですが、この条例は上記8項目の原則を踏まえた内容から構成されていると
    理解します。
    この条例の第7条において、(公文書の公開義務)について規定しています。
    第7条
     実施機関は、公開請求があったときは、公開請求者に対し、当該公文書の公開をしなければならな
    い。ただし、次の各号のいずれかに当該する情報(以下「非公開情報」という。)については、公開
    しないことができる。
    (3) 法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又
       は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって次に掲げるもの、ただし、人の生命、健康、
       生活又は財産を保護するため、公開することが必要であると認められる情報を除く。
      ア、公開することにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利害を害
       するおそれがあるもの
      イ、実施機関の要請を受けて、公にしないとの条件で任意に把握されたものであって、法人等又
       は個人における通例として公にしないこととされているもの
     
     私としては、以上のことを踏まえて、次のように考えます。
    〇 領収書に記載される事項は、法人であれ個人事業者であれ、領収書の受領者名、領収書の発行者
     名(法人名又は個人名)、対象品目、金額、年月日などであると、私自身の経験から推察します。
     これらが記載された領収書を公にすることは、上記第7条(3)のア又はイのいずれにも該当する
     とは考えられません。
      したがって、当該事項を黒塗りする必要があるかと言えば、ないと考えます。
    〇 ただし、上記に記述した、③ 目的明確化の原則、④ 利用制限の原則を踏まえた手続きを経る
     ことは必須条件だと考えます。
    〇 また、ネット公開することや議会事務局及び図書館等ですぐに閲覧できるようにするためには、
     「野木町議会政務活動費の交付に関する条例」の第14条第2項及び「野木町議会政務活動費の交
     付に関する規程」の第9条第2項を改正する手続きを経ることが必要と考えます。
    
 また、現在、政活費の収支報告については、議会事務局職員が確認していますが、今後は、第三者がチェッ
クする仕組みを導入することが求められると考えます。
すぐに対応できそうな仕組みとしては、町で契約している監査委員によるチェック機能を導入することを提案
します。

今後、議会において議論を進めるよう働きかけていきたいと思います。